経営・戦略

2023.06.29 10:30

「推し統合報告書」でわかる人的資本経営の未来

Forbes JAPAN編集部
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独自指標は、企業を「豊か」に表現してくれる。好例が丸井グループだ。10年前に直面した経営危機が人的資本に真摯に取り組むきっかけだった。百貨店モデルでは、不可避のメガトレンド「人口減」の影響が大きい。そこで、よいテナントを目利きして利益を上げる賃貸借型へのビジネス転換を決意。求められる人材も「店舗を運営するオペレーション型人材」から「知的創造型ビジネスを担うプロデュース型人材」と変化した。

その変化に対応した独自KPIを開示。中期経営会議、新規事業、職種変更など、社内プログラムに強制でなく、自ら参画した社員の割合を「手挙げ比率」として開示(82%)。小売りのみならずフィンテック、CVCなど、グループ内での職種変更率は77%。ひとりの人材が多様な事業を経験すれば、当然成長する。職種変更後の「成長実感割合」までも開示。豊富な独自指標から「さまざまな種類のビジネスを経験した自発的な人材が、成長を実感している会社」という印象を受ける。

人的資本開示を積極的に行った結果「小売業からプロデュース人材輩出業」へと企業イメージも変わった。長期の経営課題、メガトレンド(人口減、ダイバーシティのなさ)をどう人的資本で「解く」か。企業が人的資本開示と向き合うことは、組織風土の変革の糸口になる。5点評価の37社の統合報告書には、人的資本を積み重ねるためのヒントがあふれている。


田中 弦◎Unipos代表取締役社長CEO。ソフトバンク、ネットエイジグループなどを経て、2005年Fringe81を創業。17年に東証マザーズ上場。21年10月、人的資本向上事業へ専念するためUniposに社名変更。

文=フォーブス ジャパン編集部

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