ジョコビッチがこのパッチを装着しているところは、2回戦で当たったハンガーのマートン・フチョビッチとの試合中に初めて確認された。
ジョコビッチはその後の記者会見で、パッチはコートで最高のパフォーマンスを発揮できるように、チームが提供してくれた「信じられないほど効率の高いナノテクノロジー」だと説明し、これがなければ「おそらくこの場にはいないだろう」とも話した。
また、子供の頃に憧れていたマーベルのスーパーヒーロー「アイアンマン」になろうとしたんだとも述べている。
ジョコビッチがつけていたパッチは、イタリアのTao Technologies(タオ・テクノロジーズ)が手がける「TaoPatch(タオパッチ)」という製品。公式ツイッターでは、タオパッチは「日光や体の熱によって活性化」し、「ナノクリスタルから体に向けて光子が放出されることで、いくつかの健康効果をもたらします」とうたっている。
公式ウェブサイトでは、タオパッチは「治療効果のある波長の光で体を養い、副作用もなければ化学物質の放出もありません」と説明している。根拠として、査読付き医学誌「Minerva Medica(ミネルバ・メディカ)」に掲載された研究成果も紹介しているが、実のところこの研究は予備的な段階のものにとどまっている。
このパッチについては、全仏オープンも、男子ツアーを統括するプロテニス協会(ATP)も、大会での使用が認められているのかを含めコメントしていない。
ジョコビッチがタオ・テクノロジーズとスポンサー契約を結んでいるのか、それともたんに一消費者としてタオパッチを使っているだけなのかは不明だ。
同社の米国での販売サイトでは、「米食品医薬品局(FDA)への登録手続き中」と説明しており、完了までに数カ月かかる可能性もあるという。
パンを持った筋力テストでアレルギー判断?
ジョコビッチは、一時的な流行りの健康法やエセ科学を広めているとして批判を浴びた過去がある。ジョコビッチは新型コロナウイルス感染症ワクチンの接種を拒否し、2022年の全豪オープンや全米オープンなど、いくつかのトップトーナメントの欠場を余儀なくされた。BBCによる同年のインタビューでは、「エリートのプロアスリート」として、食品やサプリメントをはじめ摂取するものには細心の注意を払っており、ワクチンを接種しないのは自分の得た情報に基づく判断だと説明している。
ジョコビッチはまた、「グルテン不耐症」を理由に、10年以上にわたってグルテンフリーの食生活も続けている。ただ、自分がグルテンアレルギーと判断したのは、ひと切れのパンを手に持って筋力を計るという、ある医師による非科学的なテストが根拠だったと報じられている。
第3シードで全仏オープンに臨んだジョコビッチは11日、決勝で第4シードのノルウェーのキャスパー・ルードをストレートで下して優勝。グランドスラムと呼ばれる四大大会の優勝回数を23に伸ばし、歴代最多で並んでいたラファエル・ナダル(スペイン)を抜いて単独首位に立った。
(forbes.com 原文)