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2023.06.13 08:30

アドビの法人向け生成AIツール「Firefly エンタープライズ版」の実力

安井克至

Poetra.RH / Shutterstock.com

アドビが3月にリリースしたText to image(テキストから画像を生成する)機能Firefly(ファイアフライ)を使って、ユーザーが約2億枚のAI生成画像を作成したことが明らかになった。同社は6月8日、幅広い消費者がFireflyを利用したことを受け、法人顧客向けの「Adobe Firefly エンタープライズ版」を発表した。

Fireflyの学習には、アドビが提供するプロ向けの写真、動画、イラストが商業利用できるサービス「Adobe Stock」の画像やオープンライセンス画像、著作権が失効したパブリックドメイン画像など、1億枚以上の画像が用いられている。同社が頼りにしているのは、コントリビューターから提供される高品質の画像だ。

コントリビューターは、画像が販売・使用された際に33%程度のロイヤリティを得ることができる。Adobe Stockには、写真やイラスト、動画、音楽トラックなどのクリエイティブ素材が3億3000万点以上揃っている。最近、Adobe Stockにコントリビューターが提供したAI生成画像を扱うカテゴリーが新たに追加された。同社は、コントリビューターが使用権を持つ場合にのみ、提供された画像を採用しているという。

コントリビューターの一部は、Fireflyの学習にAIが生成した画像が用いられていることや、自身の作品がFireflyの学習や開発に使用されることからオプトアウトできないことに懸念を示している。アドビの広報担当者によると、コントリビューターとのライセンス契約には、画像をAIの学習に使用する可能性が明記されているという。アドビは、将来Fireflyがベータ版を終えたときに、コントリビューターに補償する予定だとしている(広報担当者は、コントリビューターに支払う金額については明言を避けた)。

テキストから画像を生成するAIモデルの中には、著作権のあるコンテンツを学習に使ったことで法的問題に直面したものもある。アドビでデジタルメディア事業担当シニアディレクターを務めるメレディス・クーパーによると、企業は生成型AIツールを用いて画像やコンテンツを作成しても、訴訟や批判の対象にならないという保証を求めているという。「Fireflyは安全に商業利用ができるよう設計されており、訴訟された場合はアドビが補償する」とクーパーは話す。
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編集=上田裕資

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