天ぷら元吉
「白エビの香りは揚げないとでないけれども、火を通すとねっとりとした食感が失われる」と、白エビの天ぷらの上に生の白エビを乗せるなど、素材をより楽しむ方法を追求。
天ぷらといえば「揚げたての熱々」ではなく、中の食材の風味を感じるのに最適な温度で提供しようと、揚げたての天ぷらを適正な温度まで素早く冷ます送風機「北風」を開発、さらに、揚げている最中の油に水を注ぐのは、危険だとしてこれまで御法度とされてきたが、太刀魚を揚げている最中にあえて水を入れ、直後に蓋をすることで、蒸し焼きのように水分を保ったまま揚げるなど、まさに常識破りの、新しいアプローチを行なっている。ペアリングはシャンパーニュの考えを取り入れ、日本酒をブレンドするという斬新なつくりで知られる「IWA 5 Assemblage 3」。
鰻はし本
鹿児島県泰斗商店の横山桂一さんが手がける「横山さんの鰻」を使い、室町時代に食べられていた筒切りして串に刺し、炭焼きするスタイルを復活。「蒲焼」と呼ばれるようになったのも、元々はこの形が蒲の穂に似ていることからついたという。新しいアレンジとして、山椒味噌を塗って焼いて提供。また、関東風の蒸してから焼く方法も再現された。
ペアリングは、尾鈴山蒸溜所の希少な焼酎、限定品の尾鈴山山ねこを。5代目の黒木信作氏も宮崎から会場入りし「芋から山椒に近い、柑橘のような味わいの天然成分が抽出されていること、銅の蒸留機で蒸留することで、鰻のタレの香ばしさと合う、キャラメルのようなニュアンスが表現されている」と、この焼酎との相性を伝えた。
傳の長谷川氏は「今回ゲストとして参加した海外のシェフ達も、食べて、見て、この日の料理を、今後自分の料理に反映させたりしてゆくはず。そんな広がりが“進化論”につながっていくはず」と語った。
今回のイベントは東京都が主催したが、都の担当者は、「東京の食は、日本中、世界中から多様な食が集積し、磨かれ、独自の食文化を形成したことが特徴。その中には当然東京のローカルの食も含まれている。今、ロ―カルガストロノミーに代表されるように、地方の食が頑張っている。東京の食をさらに発信していきたい」と締め括った。
国際都市であるとともに、政治の中心としても長い歴史をもつ東京。そのアイデンティティを江戸時代にまで遡り見つめ直す試み。世界と広がり、つながってゆく中で、他の都市にはない「東京らしさ」の再発見と新たな価値の創造が、今求められていると言えるだろう。