食&酒

2023.06.25 17:00

東京の食のルーツ、「江戸前」の歴史と進化

江戸から東京へ、現代に至る歴史の中で、それぞれに進化を続けてきたこれらの料理を、実際に食べて体験ができるという趣向だ。また、このための特別なペアリングも考案され、料理と共に提供された。

このディナーは2回転制で、参加者は6人ごとに3つのグループに分かれ、まるで屋台をハシゴするかのように、それぞれのブースをローテーションで訪問した。

傳 「傳最中」

傳 「傳最中」


筆者のグループのスタートは「傳」のシグネチャーの最中。最中の皮を、料理に取り入れたきっかけは、長谷川氏が友人から、和菓子離れで家業の最中の皮が売れなくて困っている、と聞いたから。

長谷川氏の店には外国人も多く訪れるが、最初の頃は、日本料理だから、箸使いなどを気にする人も多かった。緊張せずに、手で気軽に食べられる前菜をと考えていたことから、間に西京味噌に漬けたフォアグラといぶりがっこを挟み、季節の果物などを入れるフォアグラ最中が完成した。

この日は江戸時代庶民に親しまれていた甘味で、和菓子作りの際の甘さの基準にもなっていた干し柿を使って提供された。ペアリングはフォワグラの脂をすっきりとさせる、ルイナールのブランドブラン。

鮨まつうら

鮨まつうら 「大トロ漬け握り/小肌/鮪の脳天の握り/あん肝巻き/赤むつのどんぶり」

鮨まつうら 「大トロ漬け握り/小肌/鮪の脳天の握り/あん肝巻き/赤むつのどんぶり」


鮨まつうらでは、最初の一貫としてお出しする本鮪の脳天の握りで、まずまつうらのシャリ、海苔、煮切りを知って頂く。今回は柴沼醤油醸造の醤油、もろみを使った特別仕様を鮪に合わせて。続いて江戸時代は脂が強すぎることから好まれなかったが、今や鮨の花形となったマグロの大トロの握りから。続くコハダは昔から親しまれてきた寿司ネタの代表格だが、コハダの鮮度が良くなり、冷蔵技術が発達したことから、軽やかに酢で〆るだけの今の時代にあった酸味に。肉体労働が中心だった当時の職人と現代人では、求める酸味も違うのは当然だろう。

最後は深海魚で、獲る方法がなかったことから江戸時代は食べられていなかったが、今人気の赤むつを炙って作った小さな丼で締め括った。ここでは、メロンのような甘い香りが特徴的な仙禽の「ナチュール2023」と、あん肝巻きには、新政の貴醸酒「陽乃鳥」が提供された。

おそばの甲賀 「すだち蕎麦、キャビア蕎麦」 

おそばの甲賀 「すだち蕎麦」 

おそばの甲賀 「すだち蕎麦」 


「江戸料理といえば、殿様に献上する料理。殿様が今生きていたら食べただろうという蕎麦を想像しました」と語るのは、おそばの甲賀の甲賀宏氏。蕎麦粉の芯の部分を粉にした更科粉を使った蕎麦は献上蕎麦とも呼ばれ、殿様が食べていたもの。それに大葉を練り込んだ麺をつゆで食べるキャビア蕎麦。また、たっぷりのすだちのスライスを乗せた夏の定番のすだち蕎麦を提供。

おそばの甲賀 「キャビア蕎麦」 

おそばの甲賀 「キャビア蕎麦」 


ペアリングには、サントリーシングルモルトウイスキー、山崎12年を使ったハイボールが提供された。

傳 「傳タッキー」


その遊び心に、外国人のゲストが思わずにっこりしそうな、某有名ファストフードチェーンのパッケージをアレンジした箱に入った「おしのぎ」。

箸を使わずに手づかみで食べられる手羽先、その中にもち米と季節の食材を合わせたものを詰めるが、この時期はカリカリ小梅と赤紫蘇ふりかけが入ったもの。日本で揚げ物とよく合わせるのがビール、ペアリングは、生ジョッキをイメージして缶の口が大きく開く、アサヒスーパードライの生ジョッキ缶。
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文=仲山 今日子

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