政治

2023.06.13 16:30

押し通された「改正入管法」の舞台裏 国会参考人が問う

幻と消えた修正案の要点

衆議院法務委員会の舞台裏で協議された修正案には、私が参考人として提案した点が全て反映されたわけではなく、また私が提案していない修正点も多く含まれていた(原文は私の4月26日付ツイートの写真を参照)。仮に修正案が全て反映されたからといって政府与党法案に全面的に賛同できたわけでもないが、少なくとも以下の点は実質的な修正だった。

(1) 送還停止効の解除の根拠となりうる犯罪の範囲を狭める(第61条の2の9第4項第2号の本則修正)

→これにより、好ましくない団体のビラ配りのバイトをしただけで庇護申請者が強制送還される危険が排除されたはずだった。

(2) 「テロ行為やその幇助などをもしかしたらするかもしれないと疑われるかもしれない庇護申請者」といういわゆる「2重の推定」を削除する(第61条の2の9第4項第2号の本則修正)

→これにより、まだ1回も庇護審査されていない申請者も含め(昨年末時点で)推定約2000人の非正規滞在中の庇護申請者その全員について、入管庁による無制限の裁量権で送還されかねない危険が排除されたはずだった。

(3) 在留特別許可の考慮要件で「家族関係」の後に「子どもの利益を含む」を追加する(第50条第2項第5号の本則修正)

→これにより、いわゆる「仮放免の子どもたち」約300人弱に、日本での夢ある将来が開けるはずだった。

(4) 難民認定に関する第三者機関の設置について検討することを明記する(附則修正)

→これにより、廃案一択派が強く求めている第三者機関に関する検討を政府がせざるを得ない法的根拠ができたはずだった。

上記に加えて、仮放免中の子ども達への在特について、もし立憲が修正案に乗る前提で協議が更に進んだならば、子どもだけでなく親にも(刑法犯歴などが無いことを条件に)原則的に在特を出すことまで俎上に上っていた。これは日本の入管行政史上前代未聞の「集団正規化」に実質的に近い措置となったはずである。

確かに現在の在特ガイドラインでも可能ではあるものの、やはり行政府だけでは勝手に判断できず立法府による英断が必要なのだが、法務大臣問責決議案まで出されたことで親への在特の可能性が減ってしまった。某議員の言葉を借りれば、「仮放免の子ども達とせっかく繋ぎかけた手」を、廃案一択派が振り払ってしまったのである。

さらに少し専門的な話にはなるが、3回目以降の難民認定申請者(昨年末時点で370人)で「相当の理由のある資料」を新たに提出できない者の送還停止効が解除される件については、その決定に「処分性」を持たせることで行政不服審査法の対象とし、退去強制令書発付取消訴訟や難民不認定決定取消訴訟に加えて、もう一枚安全弁を設けることも検討対象とはなっていた。

もし立憲が修正協議を続けていたら、これらの点についても更なる進展が望めたかもしれないと思うと、無念で仕方が無い。
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文=橋本直子

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