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2015.07.06

バフェット流銘柄選びと格言に学ぶ「本質の見抜き方」CASE05 ペトロチャイナ

@wikimedia

バフェットは1970年から、バークシャー・ハサウェイの年次報告書の巻頭に「バフェットの手紙」を書き記し続けている。
そこに書かれた言葉は簡潔で、ウイットにあふれ、本質をとらえており、投資のみならず、ビジネスや人生のヒントになる哲学が詰まっている。
投資家で大富豪となった人物はたくさんいても、「賢人」として世界中から尊敬を集める投資家で大富豪はバフェット以外にはいない―




STOCKS BUFFETT CHOSE 04
Petro China ペトロチャイナ

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あなたに会いに来た人の体重が、
150キロだったら一目見ただけで太っていることはわかります



2002年と03年に、バフェットは中国の巨大石油会社ペトロチャイナ株の1.3%を4 億8,800万ドルで取得した。決断にあたってバフェットは、年次報告書を読んだだけで、ほかの調査はしなかったという。

これについてバークシャー・ハサウェイの株主総会で「なぜ年次報告書だけで投資できるのか」と質問された。
バフェットの答えは明快だった。

「原油や精製や化学事業について理解することは大変ではありません。エクソンやほかの石油会社の案件で経験していることなので、私はペトロチャイナの価値を1,000億ドルと見積もりました。それが株式市場では350 億ドルで売られている。わざわざ経営陣と話すまでもないのではありませんか」

このときに、分析を深める理由はないことを説明したのが、上の「太った人」のたとえで、実にバフェットらしい比喩といえる。ペトロチャイナには当時、株価の3 倍もの価値があった。それで十分だ。重要なのは投資対象が太っているかどうかで、一目見て太っているとわかれば、複雑な計算をして、それ以上細かい数字を出す必要はない。情報は大局をつかむために利用するのがいちばんだというのがバフェットの哲学だ。

必要のない分析に時間をかけていれば、チャンスを失うこともある。バフェットは「判断は5 分でできるものです。そんなに複雑なものではありません」とも言う。素早く判断し、迅速に実行に移ることが成功するためには大切なのだ。

それゆえにバフェットの決断は早い。相手の話をさえぎるように「ノー」を伝えることもある。「ノー」とわかっていながら最後まで話を聞くのは時間のムダ、というわけだ。

実際、バフェットはこの5 年後に、ペトロチャイナ株を40 億ドルで売却したが、そのときの判断も早かった。

桑原晃弥=文 フィリップ・ペライク=イラスト 鈴木裕也=構成

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