だが、私たちの健康状態や経済的な豊かさを示すこうした数値は、いわば大学進学適性試験(SAT)のスコアのようなものだ。よく言っても、私たちの将来を予測する近似値でしかない。
高齢になってからの暮らしを予測できるもう1つの数字、前述の2つ以上に実際に近い状況を予測できる可能性がある数字は「郵便番号」だ。住所は退職後の生活に多大な影響力を持ち、それに関する高い予測力を持つとされている。
世界で進む高齢化にともなう課題や可能性について研究するマサチューセッツ工科大学(MIT)の「エイジラボ(AgeLab、高齢化研究所)」も、リタイア後に住む「場所」が果たす役割について、調査している。また、収入や人種などを基準に分類したグループごとの健康状態の違い(健康格差)に関するその他の研究でも、住所は特に重要視されている。
ニューヨーク大学グロスマン医学部の研究チームが発表した最近の研究結果は「Built Environment(建物環境)」と寿命に関連性があることを指摘している。質の高い食品へのアクセス、酒類・たばこ販売店の数、歩きやすさ、公園・緑の多い地区の有無、住宅の特性、大気汚染といった要素はすべてが、平均寿命に影響を与えているという。
また、同じ大都市圏、同じ市や町の中でも、あるいはわずか数ブロック離れた地区であるというだけでも、平均寿命や生活の質が大きく異なる場合があることは、その他の多くの研究からも、結果として示されている。
リタイア後の生活に関する計画に「寿命」という視点を加えるなら、全般的な生活の質についても、検討する必要がある。高齢になってからの住む場所について、私たちはどのように考えればいいのだろうか?
以下、検討すべきことの「一部」を紹介する。