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2023.06.09

各国で続く政府端末でのTikTok禁止、その影響は

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動画投稿アプリTikTok(ティックトック)は、親会社の中国IT大手バイトダンスがユーザーの個人情報を中国政府と共有しているとの懸念から、各国で同アプリの使用が制限されるのではないかとの見方が強まっている。TikTokはすでに数カ国の政府端末で禁止されている。

米国では、議員が中国との関係悪化と選挙の情報操作を使用にTikTokを禁止する法案を提出。TikTokは複数の州で政府端末での使用が禁止されており、同国の一部の大学では学生が学校のインターネットを通じてTikTokにアクセスできないように制限されている。米国以外にも、10カ国近くが同様に政府端末でTikTokの使用を禁止している。

各国では、中国の2017年施行の国家情報法に基づき、ユーザーの個人情報が中国政府と共有されることが懸念されている。フォーブスによると、バイトダンスがTikTokを利用してユーザーの位置情報を無許可で収集しようと計画していた。こうした監視やトラッキングに関する報道を受け、各国では政府端末でTikTokを禁止したり、政府のWi-Fiでアクセスできないようにしたりする法案が推進されている。また、アプリがユーザーのキー入力を監視しているという報告もある。

フォーブスは、昨年行われた米国の中間選挙で、米政治家に関するいくつかの動画が中国政府系のアカウントによって拡散されたと報じており、TikTokが分裂を促しているのではないかという議論が生じた。ウッドロー・ウィルソン国際学術センター・キッシンジャー米中関係研究所のロバート・ダリー所長は、中国政府がアプリ上でプロパガンダを拡散する可能性が、米国にとって脅威になると指摘した。

データセキュリティやプロパガンダ・偽情報の拡散に対する懸念は、近年緊迫している米中関係によってさらに強まっている。ダリーは、中国政府がTikTokを禁止する取り組みを「報復の促進」と見なし、FacebookやYouTube、グーグルなどの米国製アプリを禁止する可能性があると指摘。「米中は、今後数十年続くとみられる敵対関係にある。冷戦のように危険で犠牲の多いものになるだろう」との見解を示した。「この関係は本質的に冷戦と同様の関係であるため、中国とその製品を警戒する必要がある。中国は優位性を高めるため、あらゆる方法でこれらのプラットフォームを利用してくるだろう」

テキサス州選出のマイケル・マコウル下院議員(共和党)は2月、財務相に米国内のユーザーによる中国政府が関与しているプラットフォームの使用を制限する権利を与える「米国の技術的敵対者を阻止する(DATA)」法を提案した。

3月には、バージニア州のマーク・ウォーナー上院議員(民主党)が「情報通信技術にリスクをもたらす安全保障上の脅威の出現を制限(RESTRICT)」法を提案。同法案は、違反者に民事・刑事罰を科し、商務省に外国事業体からの潜在的なセキュリティ脅威を特定する権限を与える。
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翻訳=三浦乾

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