米国市場はターゲットにしない
パンデミックによってモビリティとトラベル業界は大きな打撃を受け、配車サービスやタクシーアプリを運営する企業の業績は悪化した。また、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻後、ロシアのテック企業の多くは制裁を受けた母国にとどまるか拠点を他国に移すかの選択を迫られ、inDriveは後者を選んだ。「我々は、2022年6月にロシア事業を完全分離した。ロシア側は、最近独自のモバイルアプリを使い始めている。新たなアプリの開発には時間を要した」とトムスキーは話す。
ロシア事業の構造について、inDriveの広報担当者は次のように述べている。「かつてinDriveのロシア事業だった部門は、現在は当社から完全に独立しており、現地の経営チームによって所有・運営されている。当社とは別会社であり、ロシア法人がinDriveブランドを使用することはない」
ロシアからの拠点の移動には、数百人の従業員を転勤させるなど、多くの費用を要したという。「どのようなビジネスであれ、ロシアに拠点を置くのは良い選択ではない。我々は2022年に1000人の従業員を移転させた」とトムスキーはいう。現在、従業員の大半はカザフスタンとキプロスに拠点を置いている。
inDriveは今年2月、ゼネラル・カタリストから1億5000万ドルを調達したが、これは負債による調達で、返済条件はinDriveの業績に連動している。この資金は、発展途上国や未開拓の市場における事業の多角化に充当されている。
トムスキーによると、新興市場を対象にした成長戦略が軌道に乗っており、米国市場への進出は検討していないという。「我々は2018年にニューヨーク市で小規模なテストを行ったが、結果は芳しくなかった」とトムスキーは話す。
彼は、inDriveの価格交渉機能について触れ「米国人は交渉をしたがらない」と述べた。「彼らが節約したいのは、お金ではなく時間であることに気がつき、我々は米国でのサービスリリースを見送った。我々は、今ではより多くのデータや資金を保有しており、将来的に改めてテストを実施したい」とトムスキーは語った。
(forbes.com 原文)