海外

2023.06.12 08:00

ロシア発の配車サービスinDriveが母国を離れ新興国を目指す理由

安井克至

Getty Images

ロシアの配車サービス企業inDrive(インドライブ)は、母国からの撤退を完了し、新興市場での成長を目指している。同社はロシアで設立されたが、現在は米国に本社を置いている。ロシアによるウクライナ侵攻を受け、同社は母国の事業を切り離し、新興市場で事業拡大を図ると同時に、自社のVC(ベンチャーキャピタル)ファンドを通じたスタートアップ投資に注力している。

CEO(最高経営責任者)のアーセン・トムスキー(Arsen Tomsky)によると、inDriveは最近1億5000万ドル(約210億円)を調達し、配車サービス以外に事業領域を広げることを目指しているという。同社の配車サービスの特徴は、顧客がドライバーと値引き交渉ができることだが、今後はさらなる差別化を図ろうとしている。

「我々は、インターシティやシティカーゴ、ラストワンマイル・デリバリーなどのモビリティビジネスを多くの場所で展開している」とトムスキーは話す。彼によるとinDriveは最近、ヨルダンとジンバブエ、キプロスに進出したという。

同社はアジア、ラテンアメリカ、アフリカ、ヨーロッパの47カ国で配車サービスのほか、物流や食品配送、長距離移動などの事業を展開している。

「この数年、我々は配車サービスの拡大に注力し、世界にまたがる大規模な都市ネットワークを構築した。これからは第2ステージに突入し、多くのビジネスバーティカルを段階的に立ち上げていく」とトムスキーは述べた。

彼によると、同社が進出した市場には潜在顧客が多く存在するが、これまで競合企業が十分にサービスを提供していなかったという。同社は新たな分野に進出しており、最近ではブルーカラー向けの求人情報検索サービスをカザフスタンでリリースした。

「このサービスは、TikTokとティンダーを組み合わせたようなものだ。短編動画で仕事の情報を見ることができ、自分に合ったものは選択し、そうでなければスワイプすることができる」と、トムスキーはいう。

inDriveは先に物流部門の強化のため、ラストマイル配送向けソフトウェアプラットフォームを提供するオランダのSaaSスタートアップMaster Deliveryを買収すると発表した。また、同社は新興市場の小規模スタートアップに投資する1億ドル規模のコーポレートベンチャーキャピタルファンドNewVenturesを立ち上げた。

inDriveに限らず、配車サービス業界全体にとってこの数年は激動の時期であり、多角化戦略の展開は同社にとって大きなターニングポイントとなっている。
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編集=上田裕資

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