なくせ現代奴隷。労働環境の監査人

鎌倉サステナビリティ研究所代表理事 青沼愛

ソーシャル・オーディター、直訳すると「社会監査人」。企業の労働環境や環境対策などを人権の視点で監査する仕事だ。日本ではまだ聞きなれないが、欧州ではビジネス運営に不可欠になりつつある。青沼愛は、日本国内を拠点とする数少ないソーシャル・オーディターのひとりだ。大学時代、ボランティア先のバングラデシュで世界の貧困に触れ大きな衝撃を受けた。「国が発展しても、貧困層が出稼ぎで働く工場の労働環境は変わっていないと気づいた」(青沼)。

貧しさから危険な環境での労働や借金代わりの労働を強いられる、身分証明書を雇用主に管理され逃げられない──。こうした暴力や脅しのために劣悪な労働環境で働く人を「現代奴隷」と呼ぶ。その出稼ぎ先の多くは、先進国の有名ブランド製品の工場。「海外のバイヤーがこの状況を知らないことが問題では」と疑問を抱いた青沼は、現地でヒアリングを進めるうちにソーシャル・オーディターの存在を知り、2011年からフリーランスで働き始めた。

13年、同国で先進国向け衣料品工場が集まるビル「ラナ・プラザ」が崩壊し1000人以上が亡くなる痛ましい事故が発生。それ以降、欧米ブランドでは工場での労働環境改善の動きが盛んになったが、日本のアパレル企業ではその動きはあまり見られなかった。「ブランド側が変わらなければ何も変わらない」。

ファーストリテイリングは当時海外の動向を注視するなど他社の一歩先を行っていた。青沼は13年、日本で数少ない専門チームを設けていた同社に入社。取引先工場での労働環境改善や現地ワーカー支援に関わり、大企業の決断が世界中の工場に影響することを実感した。

再度独立した青沼が情熱を注ぐのは、日本の現代奴隷をなくす活動や日本企業の生産工程の透明化。米国の人権報告書によると日本の人権侵害度合いは非常に高く、他国に比べソーシャル・オーディターの数でも大きく後れをとっている。「搾取を伴わない商品製造網、どこでも幸せに働ける世界をつくりたい」。

あおぬま・あい◎2011年にソーシャル・オーディターとして活動開始、バングラデシュを拠点に社会監査や労働環境改善に携わる。13年ファーストリテイリング入社、取引先工場における労働環境改善等に携わる。退社後再度独立、国内外で社会監査を行う。17年サステナビリティ分野を研究する一般社団法人鎌倉サステナビリティ研究所を設立。

文=菊池友美 撮影=帆足宗洋

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