実際に所属する3人の社員の声からは、個々のライフスタイルや価値観に合わせた就業環境を整えることで、より社員のモチベーションとパフォーマンスが向上することがうかがえた。
グローバル目標として2030年までに女性管理職比率50%達成を目標として掲げている、コカ・コーラ。しかし、日本コカ・コーラはその目標を5年前倒して25年までの実現を目指す。現時点では約40%と目標達成までに迫っているが、社内啓発や文化浸透のために、3月8日の国際女性デーには社内イベント「International Women’s Day with Forbes JAPAN」を開催。
こうした活動に加え、実際の働き方についてもさまざまな工夫が実践されている。まず、採用フローには必ず女性メンバーが参加。
入社後も、性別や子どもの有無に関係なく、社員個々のライフスタイルを重視した働き方を提供している。その代表例として挙げられるのが、フレキシブルな働き方だ。コアタイムなどは設けずに、社員が自分のライフスタイルに合わせて就業時間を選ぶことができる。
また、女性のキャリアアップを後押しする、社内の有志グループ WLC(Women’s Leadership Council)の存在もユニークだ。これはもともと韓国コカ・コーラで女性活躍の実現に貢献した実績を元に、日本でも立ち上がったグループである。
女性社員へのアンケートから抽出された3つのインサイト──①キャリアアップに対して積極的になれない、②自分に近しいロールモデルがない、③キャリアパスが思い描けない──これらの悩みに女性リーダーたちが直接答えていくことを目的に設立された。
WLC 主催のトークイベントのほか、メンターを求めている人とメンターをつなぐ活動や、ライフワークバランスのためのディスカッショングループを作るなど、制度として確立しづらいソフト面をフォローし、会社側もWLCの活動をサポートしている。
日本コカ・コーラではこうした女性活躍の推進を含むDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の各施策を積極的に実践しているが、実際の社員はどのように受け止めているだろうか。3人の社員の声を聞いてみよう。
リーダー像をより身近に感じたリーダートーク
カスタマー&コマーシャルリーダーシップ ショッパー・チャネルチーム・野上渚
子育てや介護を含め、いろいろな環境に置かれている社員がいると会社が理解してくれているからこそ、フレキシブルな働き方が選択できるのだと感じます。加えて、社内のメンバーにも個々を尊重するという文化が根付いています。だからこそ、ポジション関係なく公平に自由な議論ができますし、社員間だけでなく、社員と会社間における信頼関係がこういった働き方の柔軟性や働きやすい環境への好循環を生んでいるのだと感じています。
さらに、私が当社の文化として素晴らしいと感じているのが、WLCが開催しているリーダートークです。キャリアに対しての考え方は社員それぞれ異なります。近しいリーダーが成功体験だけでなく、失敗談を含む経験やストーリーを共有してくださると、新たな気づきやモチベーションにもつながります。また、改めて自身のキャリアを見つめる機会にもなり、非常に意義深いと感じています。
プライベートを無理に隠すより、ありのままの自分でパフォーマンスを上げる
マーケティングプラットフォームサービス・藤田郁子
すごく当たり前のことですが、会社側が、従業員には仕事以外の私生活もあるということを、深く理解していると感じます。
例えば、グローバルチームとのオンラインミーティングのとき。時差の関係上、夜の遅い時間帯になることもしばしばで、子どもがお風呂上りのまま登場するということもありました。それでも、メンバーの誰もが、「子どもの世話をしてあげて」「隠さなくてOK」と声をかけてくれます。個人の生活があるのは当たり前。そんなことは気にせず、会議のアジェンダにコミットし、議題になっている問題解決に目を向けよう。その方が100%のパフォーマンスを発揮できるという考え方です。
業務状況もチームで共有しているので、会議の日時や場所を調整してくれます。柔軟さによって仕事へ集中する環境を作り、目標を達成するという雰囲気がどの国のどのメンバーと話していても感じられます。ルールや制度だけではなく、そういったカルチャーが根付いているから、インクルーシブな組織になれるのだと思います。
まだパイロット版なのですがユニークだと思っている制度は、シニアマネージメント層とのランチミーティング。「女性」という軸だけでなく、いろんなキャリアパスを描いてきた人たちに、個人的な質問やグローバルでの経験などカジュアルに聞くことができます。
ロールモデルを知ることで勇気づけられますし、業務上のインスピレーションも得られます。社員にとってはインパクトがあり、マネージャー層の個人的な面にも触れられるので、継続する制度になってほしいです。
男性として育児休暇を取得し、より会社との信頼関係が密に
人事本部・泉達也
当社は社員を大事にする会社だと感じています。私は男性として育児休暇を取得したのですが、正直本当に休んでいいのか、キャリアに支障がないのか、会社との関係を維持できるかと悩む部分もありました。しかし、実際は育休に変な罪悪感を覚えることなく、会社や職場に対して心理的安全性を保ったまま家族と向き合うことができました。
復帰後もリーダーや上長が「子どもが生まれたら今までとは違う生活になるのだから、早く帰った方がいいよ」と声をかけてくれるし、私のそういった姿が誰かのロールモデルになればいいなと思っています。
会社が柔軟な働き方を推奨し、支援するのは「子どもがいるから」ということだけではありません。例えば「17時に仕事を切り上げてジムに行きたい」という人がいれば、それを尊重し、その人が安心して私生活を楽しむ環境を作る。
プライベートを充実させることによって業務のパフォーマンスが向上する──それが当社のスタンスですし、私も人事に携わる者としてそういった環境を整備していきたいと思っています。