けれどそこで見た景色は、欧米由来の現代アートを日本でやることができて喜んでいる美術関係者と、そこに税金が投入されることに反感を抱いていている市民の対立で。それを見てから欧米由来のアートの考え方と日本の土壌の間にどうしても埋められない考え方のギャップがあると感じて、このまま日本の美大に進学したら欧米由来の現代アートを日本でやることができて喜んでいる美術関係者側の人間になってしまうと思って、日本ではなく、現代アートの輸入元であるヨーロッパで勉強しようと考えました。
──実際に2022年からウィーンに来られてみて、どうですか。
来てよかったという思いしかないですね。大学内で広いアトリエ(ウィーン美術アカデミーはウィーン市の中心部にある)が初年度から与えられて、24時間365日オープンなので、1日に6〜8時間くらいはアトリエで時間を費やしています。日本の美大や芸大だと自分のアトリエがもらえるのは3年次からが多く、スペースももっと小さいので、とても恵まれていると感じます。
同じアトリエにいる同級生も、ウクライナ、オーストリア、チェコ、イタリア、ベトナム、中国、韓国など、多国籍で、学部では自分の知る限り日本人は一人だけです。年齢に関しても自分がクラスでは最年少で、大学の学生年齢平均は体感では26〜28歳。同級生は20代後半から40代まで様々で、ダイバーシティにあふれています。
キャンバスは「発泡スチロールにレシートを貼って」
──円安もあって、ウィーンでの生活は大変な部分もあるかと思いますが。
基本的に外食をせずに自炊しているので、なんとかなっています。月の食費は200ユーロ行っていなくて、日本円にすると2万円を超えるくらい。交通費は、学生向けの割引があるので、75ユーロ、1万円ちょっとでウィーンの地下鉄やトラムが半年間乗り放題のパスがあります。あと、ウクライナの戦争の影響で電気代が上がったのですが、その分をウィーン市からサポートが出るので、1年で日本円にすると6万円くらい補助してもらっています。
それ以外にも日本やオーストリアのさまざまな奨学金に応募しています。あとは、絵を描くキャンバスが結構高いので、発泡スチロールにレシートなどを貼り付けたものをキャンパスにして絵を描いています。