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2023.06.08 09:00

アップルのVision Pro発表、ネットは大喜利で大盛況

WWDC2023で発表されたApple Vision Pro(Getty Images)

WWDC2023で発表されたApple Vision Pro(Getty Images)

アップルは5日、仮想現実(VR)と拡張現実(AR)を融合させたヘッドセット「Vision Pro」(ビジョン・プロ)を発表した。周囲の状況を認識しながら、目の前に表示されるデジタルインターフェースの操作ができる製品だ。
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VRヘッドセットは、テクノロジー大手各社がこれまで何度も普及を試みたものの、一般に広く受け入れられることがなかった分野だ。

こうしたデバイスについてはしばしば、不格好だとか、酔いをもよおす、実用的でない、高価だといった不満が寄せられてきた。

しかし、アップルはこの新製品に大きな自信を持っているようだ。価格は大胆にも、3499ドル(約49万円)に設定された。
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インターネット上には当然のことながら、Vision Proをからかう投稿が溢れた。ツイッターでは、どことなく不気味な製品紹介ビデオを、ディストピアの未来を描いたSFドラマ『ブラック・ミラー』になぞらえるコメントが相次いでいる。

「新しいApple Vision Proって、ブラック・ミラーのエピソードから抜け出してきたものみたい」
 

「時は2035年、人事部から今まさに解雇通告を受けようとしている人の視点」

「自分が機内で隣の人の顔を直視しているのは、3D空間ではそこにツイッターアプリを置いているから」


もちろん、価格をネタにした投稿も多数あった。

「3499ドルから」

「34.99ドルとは、競争力のあるすごい価格だ。皆にとって手が届く魅力的なVRヘッドセットだね。お見事! ……って、ちょっと待った」


多くの人は、テック大手が数年前からVRヘッドセットを一般消費者に押し付けていて、まるで自分の顔をスクリーンで覆うことが当然であるかのように振舞っていると指摘している。


「企業はこのVRとやらを10年前から売り込んでいる。巨額を注ぎ込んで。人はそんなもの欲しくない。『市場に決めさせる』とはよくも言ったものだ。目指しているのは、人々の生活のより多くの側面をより効率的にコントロールできるようにする方法。AIと同じように、巨額の損失もいとわないようだ」


「地球は死につつあり、ガジェットはいまいちなものばかり。テック大手ができる唯一のことは、そろって巨額を投じて、誰も着けないゴーグルを順番に作ることだ」


「いまだに巨大なVRヘッドセットを売りつけようとしているテック大手」


グーグルが「Google Glass(グーグルグラス)」で、人々の生活にARを導入しようとしたものの、大失敗に終わったことを引き合いにした投稿もあった。

「2013年ごろのGoogle Glass、着用した人が間抜けに見えるので大失敗に終わる。2023年の企業『人々はこれを着用するでしょう』」


VRを一般に普及させようとしたこれまでの試みは、この技術が特定の市場にしか訴求しないことを証明してきた。VRヘッドセットを使ったことがある人なら、その新奇さが驚くほど早く薄れることを実感しただろう。

没入型のビデオゲーム、バーチャルチャットルーム、そしてアダルトコンテンツに興味がない人にとっては、目の疲労に見合うだけの価値はないというのが一般的な意見だ。

そのため、このデバイスが実際にどのように使われるのかについて、冗談混じりに推測したコメントもあった。

「魅力的なユースケースは、超ハイになった状態で立方体を眺めることだけ」


「ついにこれが可能に!」


アップルのVision Proが他社と異なるのは、ユーザーの目をスキャンし、そのデジタルコピーをスクリーンに投影することで、アイコンタクトの錯覚をおこさせるという点だが、これは現実の人間を不気味の谷に引き込む実に不可解なデザイン選択だ。


「Apple Vision Proが実際の画像ではなく、シミュレートされたパススルー画像を前面プレートに投影するということは、ヘッドセットを装着している間に死亡したユーザーに対しても、生きているような幻の顔を投影し続けるかもしれない」


多くの人々が、製品紹介ビデオの中の意図せぬ不気味なシーンを指摘している。父親がVision Proで目を覆いながら子供たちと「遊んでいる」場面だ。


「ちょっと待ってて。普通の人間の家族のようにこの瞬間を一緒に体験したいから、お父さんは眼鏡のマスクをとってくるね」


「正直、この部分でちょっと悲しくなった」


皮肉なことに、アップルはヘッドセットが孤立感を生むことを十分認識しているようだ。Vision Proを使ったFacetime(フェイスタイム)通話では、ヘッドセットを装着していないユーザーの姿をデジタルで再現した映像を表示させる機能が用意されている。


「Vision ProでFacetimeをするときには、通話相手の全員に対して、ゴーグルをかけていない自分のアバターが表示される。 なぜかって? それは、他の人と交流するときにゴーグルをかけたままというのはとても変で、アップルもそれを知っているから」


アップルがVRヘッドセットを発表する前に、眼精疲労からユーザーを守るための機能を導入していたという皮肉を指摘する声も多かった。


「アップル『デバイスを顔に近づけすぎたら、通知を出します』。同じくアップル『このコンピューターを顔に装着しなさい』」


「iPadを顔に近づけ過ぎるなと言われたばかりなのに……」


『ブラック・ミラー』の脚本家は、2023年を凌ぐシナリオを描くことに苦闘しそうだ。

forbes.com 原文

翻訳=酒匂寛・編集=遠藤宗生

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