そんな中、2019年の世界経済フォーラムでは、日本人が開発したCO2を吸収するコンクリート「CO2-SUICOM」が注目を集めた。
今回は、CO2-SUICOMが開発された経緯と、CO2-SUICOMを使用することによるメリットを解説する。
消費量は水に次いで世界2位
政府広報オンラインによると、実はコンクリートは水に次いで世界で2番目に多く消費されている物質と言われている。また経済産業省によると、国内のセメント産業においては、2019年時点で4147万トンものCO2が排出されている。つまりコンクリートの製造時に排出される二酸化炭素を削減できれば、地球温暖化の抑制に大きな効果を発揮するのだ。
革命的なコンクリートを発明
鹿島建設技術研究所の取違剛さんは2010年、世界初の製造過程で二酸化炭素を吸収し固定する、植物のようなコンクリート「CO2-SUICOM」を開発した。
このコンクリートが世界中の建設資材として使用されると、コンクリートの二酸化炭素の排出量が6〜14億トン分も削減できるという。現在の排出量と比較すると、半分から0に近い数値を実現できると見込まれている。
発明の裏には度重なる挫折
取違さんの研究は決して順風満帆ではなかった。AERAの記事によると、取違さんは大掛かりな実験を繰り返し、1つ上手くいっても10の課題が残ったり、実験中に酸が発生し、設備が錆びてボロボロになってしまったりしたこともあったようだ。
さらに、研究を続ける中で「会社の役に立つのか」「才能を他で生かせるのではないか」と言われることもあったそうだ。
風向きが変わった瞬間
度重なる困難を乗り越え、CO2-SUICOMは2011年に製品として世に出すことができた。2018年に一度会社から研究の中断を告げられるが、2019年の世界経済フォーラムで取違さんの研究が大きな注目を集め、技術開発が再開されることになったのだ。
CO2-SUICOMのメリット
一般的なコンクリートのpHはアルカリ性であり、生態系に悪影響を及ぼすが、CO2-SUICOMはpHが中性に近く、植物や生物に優しい特性がある。また、通常のコンクリートブロックと比較して劣化が遅く、同等以上の強度を発揮する。繰り返し利用されることに対する耐久性も高いため、優れた建材を製作することができるのだ。