主任教諭であり水泳部顧問でもある山口尚己先生に、“海の学校”で得られる学びについて伺った。
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100年近く続く海での伝統的な学校行事
靖国神社や千鳥ヶ淵、皇居に程近い都心の公立校、千代田区立九段中等教育学校(以下、九段)。中高一貫校となる同校の4年生およそ160名は皆、7月末の5日間を千葉県勝浦市の守谷海岸で過ごす。創立時から100年近く続く伝統的な学校行事に参加するためだ。先生や生徒、OBを含めた多くの関係者の間で「至大荘」と呼ばれているこの行事は、同名の臨海施設を拠点に行われてきた。その施設は1924年(大正13)年創立の同校において27(昭和21)年に成田千里初代校長によって建設されたもの。
成田校長は自由主義的な大正デモクラシーの気風を反映させた、知(確かな学力)・徳(豊かな心)・体(健やかな体)を育む三位一体の新教育を理想とした人物で、その理想のもとに伝統行事「至大荘」は生まれ、目的には次の3つが掲げられる。
学校生活の一部として規律正しく、潑剌とした時間を過ごす「至大荘」は、誕生以来変わらず同校を象徴する一大イベントとなっている。その存在感は、“「至大荘」を経験して九段生となる”という言葉も聞かれるほどに大きいものなのだ。
数日を海で過ごし、目の色が変わっていく
「至大荘」のハイライトは4日目の遠泳だ。その来るべき瞬間に向かって、春から生徒たちは校舎内の屋内プールで泳力を磨いていく。「泳ぐためには体力が必要となることから、前日は食事や睡眠をしっかりとるといった生活習慣も求められます。目的を乗り越えようと普段の生活から取り組むところに、ひとつの意義を感じています」