しかし、今年の世界開発者会議(WWDC)で、待望の複合現実(MR)ヘッドセット「Apple Vision Pro」を発表したティム・クックが、自身でその製品を身につけることはなかった。
Apple Vision Proは、現実の世界の出来事を見ることができ、外向きのディスプレイに目を映し出して、周囲の人たちとのつながりを保つことができる安心感が売りのヘッドセットだが、当日のプレゼンでは、明確なデモンストレーションが欠けていた。
ティム・クックは一度もこの製品を装着しなかったし、アップルの幹部やプレゼンターもそうだった。それはなぜなのだろう?
Apple Vision Proは2024年初頭にまずは米国で発売される予定で、その後、他の国でも発売されるという。アップルは、開発者たちがMRヘッドセット用のアプリを作るために多くのリードタイムを与えており、1年以上をかけて自社が定義する空間コンピューティングに沿ったエコシステムを形成しようとしている。この製品は、アップルが万全な準備を整えた後に、市場に投入されることになる。
アップルはそれまでの間、製品に対するイメージを管理する必要がある。大きなスキーゴーグルのようなヘッドセットを装着することは、不格好ではなく、好ましい体験でなければならない。同社は現時点では、タイトな演出を加えたプロモーションビデオや写真をプロモーションに使用している。
たった1枚の写真が、厳密に管理されたPRキャンペーンを頓挫させてしまうかもしれないのだ。シリコンバレーでは、1枚の写真が製品の運命を左右してしまうことがある。その一例として紹介したいのが、かつて大注目を浴びたGoogle Glassを著名ジャーナリストのロバート・スコーブルが装着したときの写真だ。
About 7 years ago tech blogger Robert Scoble took this picture of himself wearing Google Glass in the shower.
— Bertrand Fan (@bertrandom) November 26, 2020
It was so uncool that it killed the entire product.
This Thanksgiving I thank his family for saving us from having to endure Google Glass in the real world. pic.twitter.com/cxv8SZ7MfF
こうした写真を目にした人たちが、「あまりにも格好悪く、自分では装着したくない」と思うのは明らかだろう。アップルは、このような悲惨な写真が新製品の序盤のストーリーを支配するような事態を避けなければならない。
ティム・クックが公の場でApple Vision Proを装着しているのを見るのはいつになるだろうか。
(forbes.com 原文)