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2023.06.07 08:45

Apple Vision Proは「パーソナルコンピュータ」を再定義する

安井克至

高価だがそれに見合った価値

Vision Proの価格は3499ドル(約49万円)で、2024年中の発売を予定する。価格は一般市場向けの製品としては確かに高いが、高性能コンピュータ並みのプロセッサー、高い光学性能、3Dビデオカメラ、バーチャルな大型スクリーンなど、アップルがこのヘッドセットに詰め込んだもろもろのテクノロジーを考えれば、高価な理由もわかるだろう。

アップルがつくり上げたものを言葉だけで説明するのは難しい。実際に体験してみないと、そのすごさは理解できない。デモを見て、実際に少し使ってみた体験からは、Vision Proはアップルにとっても顧客にとっても、非常に大きな意味をもつ製品だと断言できる。それは空間コンピュータ時代の幕開けになるだろうし、過去の例と同様、アップルはおそらく競争で2年は先んじている。

アップルがVision Proを成功させるには、ハードウェアとソフトウェアの両方をさらに微調整していく必要がある。さらに重要なこととして、開発者たちに働きかけてVision Pro用の製品をつくってもらうことも欠かせない。

そもそも、アップルがVision Proを一般の消費者の間に普及させていくことは可能なのかという疑問もある。顔の形や視力は人によって違うので、ユーザーに最高の体験を提供するには、何らかのかたちでカスタムフィッティングを行う必要がありそうだ。アップルにはそれができる実店舗をもつという強みはあるものの、その店舗は主要都市の人通りの多い場所にしかないのが実情だ。

とはいえ、筆者は40年にわたってアップルを観察してきた経験から、アップルが新製品とくに破壊的な製品を市場に投入するときには「疑わしきは罰せず」が正しいということを学んでいる。

アップルのこれまでの実績を踏まえれば、Vision Proが例外になるとは考えにくい。Vision Proはおそらく、アップルの技術力の高さを証明するとともに、バーチャルコンピュータに関するテック業界全体の見方に影響を与える新製品になるだろう。

Vision Proは、アップルが微調整を加えていき、開発者のサポートを得て、価格も少しずつ下げていけば、Appleの広大なエコシステムを活用できるもう1つの重要な製品になると考えられる。言い換えると、Vision Proはアップルの次のヒット製品になり、将来的に新たな収益源に育つポテンシャルを秘めているということだ。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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