テクノロジーに支えられて
ダイヤモンドファウンドリーは、マサチューセッツ工科大学、サンフォード大学、プリンストン大学のエンジニアと人工ダイヤの製造に太陽光発電を利用する機会を見いだした太陽光発電の専門家からなるチームが発案。現CEOのマーティン・ロッシェルセン、社長のカイル・ガゼイ、そして退社したジェレミー・ショルツによって2012年に設立された。創業から数年、多くの実験を経て同社はその使命を達成した。太陽の外層と同じくらい高温のプラズマを発生させるリアクターを開発した。これはサンフランシスコの施設内でわずか2週間でダイヤを製造することを可能にするものだ。
2015年には本格展開する準備が整い、映画『ブラッド・ダイヤモンド』に出演して採掘ダイヤ産業に対する意識を高めた俳優レオナルド・ディカプリオを含む投資家たちが加わった。
その後、米テック系ニュースサイト、ビジネスインサイダーの「21 Most Innovative Tech Startups(最もイノベーティブなテックスタートアップ21社)」や米テレビCNBCの「トップ50ディスラプターズ」に選ばれるなど数々の賞を受賞。ワシントン州ウェナッチーに水力発電施設を建設し、2016年には人工ダイヤ市場の消費側に注力すべくブライとジュエリー会社のOro(オロ)を買収してブライとして1社に統合した。
ダイヤモンドファウンドリーは2021年にFidelity(フィデリティ)から2億ドル(約280億円)を調達して評価額は18億ドル(約2520億円)となった。その資金はワシントン州の施設での生産量を5倍の年約500万カラットにするためのものだ。直近では、8億5000万ドル(約1190億円)かけてスペインに太陽光発電による製造施設を建設し、2025年に稼働させることを発表した。
「スペインの施設が稼働すれば年間2000万カラットの原石を製造することになり、これは現在DeBeers(デビアス)が採掘している原石の約60%に相当する。当社の技術で採掘ダイヤが不要になるほどの規模のダイヤ製造が可能だ」とアクハビは指摘する。
消費者事業を拡大
ブライを買収して以来、ダイヤモンドファウンドリーは宝飾品事業を計画的に成長させてきた。消費者に対して一貫した透明性を保ち、垂直統合型のビジネスモデルによって買い物客が信頼できる宝飾品ブランドとなることを目指している。「ダイヤのジュエリー購入はブラックボックスだ。採掘されたダイヤは15回も取引され、毎回発生するそのコストは消費者にいく。当社は他のジュエリーブランドでは制限されがちな、サプライチェーン全体の透明性を確保している」とアクハビは説明する。
2014年創業のブライは、人工ダイヤを使ったジュエリーのオンライン小売の先駆けだった。ダイヤモンドファウンドリーによる買収後もオンライン販売を貫き、カスタマイズ注文と豊富な種類の形状を売りとした。新型コロナウイルス感染症のパンデミック中もそれは十分に機能した。