ハワイにあるNOAAのマウナ・ロア大気基準観測所で記録された二酸化炭素の濃度は、昨年5月の421ppmから増えて、今年5月にはほぼ424ppmに達した。なお、北半球では年間で5月が二酸化炭素濃度のピークとなる。
今回の大気中の二酸化炭素の上昇は、NOAAとカリフォルニア大学サンディエゴ校スクリップス海洋研究所の科学者によれば、記録上4番目に大きい年次増加率である。科学者たちは二酸化炭素濃度の安定化を目指しているが、この増加はそれに反する動きである。
420~425ppmという数値は産業革命以前に比べて50%以上高い値だ。今世紀末までに地球温暖化を産業革命以前に比べて摂氏1.5度以内に抑えるという2015年のパリ協定で定められた目標の達成に向けて、各国が化石燃料排出量の削減に取り組む中でも、上昇は続いている。
NOAA長官のリック・スピンラッドは声明で次のように述べている「私たちは毎年、人間の活動の直接的な結果として、大気中の二酸化炭素濃度が上昇しているのを目の当たりにしています。毎年、猛暑、干ばつ、洪水、山火事そして嵐といった、気候変動の影響を受けているのです。この地球と、この地球を故郷とする生命を保護するために、私たちは全力を挙げて二酸化炭素汚染を削減する必要があります」
科学者たちは、気候変動による致命的な影響を防ぐためには、化石燃料からの排出を制限する必要があると何十年も前から警告してきた。なぜなら、増加する二酸化炭素レベル──主に交通や電力供給のために化石燃料を燃焼することから生じる ──が大気中に熱を閉じ込め、本来なら逃げていくはずの熱を留めてしまうからだ。これによる地球温暖化効果は、干ばつや猛暑を長引かせ、山火事や嵐をより激しくする。
国連の科学者たちは2023年3月に、地球温度が致命的かつ壊滅的な干ばつ、猛暑、嵐、海面上昇を避けるために許容限界であると推定されている(産業革命以前からの温度上昇)摂氏1.5度に接近しているため、世界は「危険な氷の上を歩いている」と警告した。さらに、国連の科学者たちは昨年10月に、排出量の削減が必要であるにも関わらず、温室効果ガスの排出量は2030年までに2010年のレベルを10%上回るだろうと警告している。
近年、州や連邦の立法者たちは排出量に対するより厳しい制限を求め、気候変動対策に何十億ドルもの予算を割り当ててきた。しかし、多くの企業や共和党の議員たちはこれらの対策を批判し、石炭、天然ガス、石油の生産に悪影響を及ぼすと主張している。昨年夏、共和党の議員たちの一部は、気候変動に対処するための連邦インフレ削減法案に含まれる3700億ドル(約51兆6000億円)の措置を激しく批判した。その中には、ローレン・ボーバート(コロラド州選出)議員も含まれており、彼女は民主党を「気候変動の大義名分のもと、米国の仲間たちを犠牲にしている」と非難した。
(forbes.com 原文)