すでに過去最高記録の更新が始まっている2023年
3月の気温の急激な上昇は、赤道太平洋の海面水温の上昇が一因であったとサザーランド氏。そして4月、世界の海洋温度は長期平均を0.86℃上回り、新記録を樹立したとNOAAは指摘しています。「これは、2016年1月に観測された記録的な暖かさの海水温にわずか0.01℃及ばず、史上2番目に高い月の海水温となりました」と付け加えています。
他には、ベトナムでは44.1℃強、ミャンマーでは43.8℃と、ここ10年で最も高い気温を記録し、スペインとポルトガルでは一部の都市で4月の気温記録を更新しています。そして、ヨーロッパの多くの国々では、今年1月に過去の同月の記録を塗り替えています。
また、5月中旬には、アメリカ西部とカナダで、通常7月下旬に記録される気温を上回る気温が発生し、山火事が起きました。科学者の独立団体であるクライメート・セントラルによると、記録的な気温の上昇は、大気が海の熱気を閉じ込める蓋を形成する「ヒートドーム」と呼ばれる気象システムがこの地域を襲っていることが原因です。
世界経済フォーラムのグローバルリスク報告書2023年版によると、異常気象は、今後2年間に世界が直面する危機のトップ10のうち2番目となっており、今後10年間では3番目に大きなリスクとなっています。そして、今後10年間の最大のリスクに、気候変動の緩和策の失敗が挙げられています。
「2014年のたった1日の暑さで、オーストラリアでは45000匹以上のオオコウモリが死ぬなど、熱波や干ばつは、すでに大量死を引き起こしている」と報告書は指摘。「洪水、熱波、干ばつ、その他の異常気象が、より深刻で頻繁に起こるようになると、影響がより広範囲に及ぶようになります」
世界経済フォーラムは、各国のエネルギーシステムの見直しを加速し、地球温暖化を産業革命前より1.5℃未満に抑えるために必要な産業界の行動を支援するため、「CEO気候リーダーアライアンス」、「産業クラスター:ネット・ゼロ・チャレンジ」、「低炭素排出技術イニシアチブ」など、多くのイニシアチブを立ち上げています。
(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)
連載:世界が直面する課題の解決方法
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