2023年は、北米、中米、欧州、アジアと広い範囲で、前例のない猛暑になると予測されている。ロイター通信によると、地球温暖化に加えて、エルニーニョ現象の発生が予想されるため、世界の平均気温は今年または来年に過去最高を更新する可能性がある。
夏バテや汗だくでの出勤、エアコンの使用による電気代の上昇に見舞われる夏は、ともすれば不快な季節だが、とくに関節痛もちにとっては文字通り苦痛となる可能性がある。記録的な高温は、痛風や慢性疾患を悪化させる可能性があるのだ。
脱水と関節炎との相関関係
米ニューヨーク在住のある男性は、同市の厳しい寒さから逃れようと、冬のあいだは温暖なフロリダ州に滞在していた。しかし同州では最近、冬季でも暑い日が増えており、痛風が悪化したため、滞在を諦めた。「フロリダはどんどん暑くなっている。以前は12月には、薄手のセーターが必要だった。それがいまでは、他の地域の夏並みに暑くなった。関節は寒くなるとこわばると思われがちだが、蒸し暑い日が続いたときにも悪化する」
こんなふうに訴えるのは彼だけではない。学術誌「American Journal of Epidemiology」に掲載された2014年の研究論文では、632人の痛風患者が、「気温が変化すると痛風発作が起きる」と答えている。適温時より高温時のほうが、痛風の発作が発生するリスクは40%高い。また、全身性エリテマトーデスと炎症性関節炎の患者も、気温が上昇する季節には関節痛がひどくなると訴えている。
こうしたケースの多くでは、暑さだけが痛み悪化の原因ではない。脱水もまた、関節痛を悪化させることがある。人間の体は、極端な暑さにさらされると、汗を出して体温を下げようとする。汗をかくと、体から水分が急速に失われて脱水状態となり、痛みを感じやすくなるため、関節痛が悪化するのだ。
学術誌「Psychophysiology」で発表された2016年の研究結果では、普段は健康で慢性疾患がない人でも、軽い脱水状態になると、痛みを感じやすくなることが示されている。
脱水状態になると、体は「滑液」を補充しにくくなる。滑液とは、骨と骨のあいだを満たして、クッションの役割を果たす液体だ。これがなければ、骨同士が接触し、こわばりや痛みを感じやすくなる。