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2023.06.07

刊行3カ月前にアンチコメント700件 米出版界がザワつく珍事とは

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アマゾンなどのEコマースは、いまのところプリオーダーのページはそのままにしているが、出版契約が解除されたということは、本が流通しないことを意味する。たとえ、この本が流通しても、同出版社の作品の中では最低の星数である。

とりあえずサラ・ストゥセクは「ビッチ」と言い放った動画を取り下げたものの、これに抗議をしたたくさんの書評やブログは残り続ける。出版社にとっても、百害あって一利なしの作品になってしまった。

ベストセラー作家のスティーヴン・キングであるまいし、刊行の3カ月以上前に書評が約700も集まるなどということはあり得ない。しかもそのほぼすべてが星1つで埋められたという本は、アメリカ出版業界でも異例の出来事だ。

果たして「スリー・リバーズ」は本として流通するだろうか? 膨大な時間をかけて執筆しただろうから、作者が全部買い取って自分で個人流通を目指すという方法も思い当たるが、しかし出版社が同意しないはずだ。無為な訴訟合戦にならないことを念じたい。

紙を刷って配達し、本屋に並べるというスピードに比べ、SNSでの拡散はあまりに速い。速過ぎる。こうなってくると、出版社側が、作者のSNSでの発言に対して相当制限をかけた出版契約を結ばざるを得なくなり、作家の口はますます重たくなっていくにちがいない。

文=長野慶太

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