そして、5月30日、未刊行の本「スリー・リバーズ」を受領したある書評家が、「Goodreads」という歴史あるインターネット書評フォーラム(会員2000万人)でおおむね好意的な書評を寄せ、星も4つ付けた(満点は5)。ちなみに時系列としては15番目前後の書評だった。
ところが、すぐに著者のサラ・ストゥセクは、TikTokで「I had a perfect 5 star average till this bitch came up(このビッチが現れるまで、私は完璧な5つ星の平均を持っていたのに)と、この書評家を名指しで非難した。この書評家がわたしの本をダメにしたという声を上げたのだ。
彼女の言い放った「ビッチ(雌犬)」という英語は、女性に対するかなりあくどい差別や蔑視の言葉であり、映画などでは乱用されても、およそ日常生活で聞くことは特殊な場面に限られる。YouTubeでこれを言うと、YouTubeから警告が来る、もしくは動画が削除されるという話も聞く。
刊行の3カ月以上前に書評が700
これに対して、多くの書評家たちがたちまちに大反論を起こした。5月30日と31日のたった2日で、約700の「スリー・リバーズ」へのネガティブ書評が「Goodreads」に一気に集まり、すべて星1つ。「買うのをやめた」「中身以前の問題」「謝れ!」「あなたこそビッチよ」と猛烈な言葉の攻撃が続いた。
結果として、この書評フォーラムではこの「スリー・リバーズ」の星は平均1.10となり、処女作ではよほどのことがない限りネット書評が3桁に到達しない現状を考えると、この「平均点」は絶対に回復しないことがわかる。
この間、出版社(スパークプレス社)はサラ・ストゥセクにアプローチし、公式な謝罪を強く示唆したが、彼女はそれに応じないどころか、「わたしはコメディアンなの。ユーモアがわからない人には用はないわ」との追いうちをかけるようにTikTokをアップロードし、さらに集中砲火を呼び込む始末だ。
これらの集中砲火は出版社にも及んだ。やむなく出版社は製本まで終わった本であるのに、サラ・ストゥセクとの出版契約を解除。同社のウエブサイトの作家のページからもサラ・ストゥセクの名前と顔写真が早くも6月1日には消えた。