バイオ

2023.06.10 11:30

ニワトリの性別を卵を嗅いで孵化前に鑑別するテクノロジー

卵トレイの上で孵化するするヒヨコ(Getty Images)

卵トレイの上で孵化するするヒヨコ(Getty Images)

全世界で、およそ70億羽の生後数日のヒヨコが窒息あるいは生きたまま粉砕されて殺されている。工場式畜産業にとって利用価値がないからだ。
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卵産業は、人類がこれまでに作り出した最も非倫理的で残酷な食品産業の1つであり、これは重要な問題だ。孵化してから数分後、すべてのオスと健康状態の悪いメスのひよこは不必要と鑑別され、窒息あるいはマセレーション(生きたままグラインダーで粉砕される)によって殺される。放し飼い、有機、バタリーケージ(金網でできた鶏小屋)など、どんな雌鶏から生まれたかに関わらず、何十億という望まれていない生後1日のヒヨコたちがこれらの方法によって殺されている。さらに言えば、メスはオスほど速く体重が増えないため、これらの方法は、フォアグラ業界において、何百万というアヒルの子やガチョウの子を選択的に殺すためにも用いられている。

孵化過程の早い段階に卵の性別を識別する、より良い、より実用的な方法を開発するためにさまざまな取り組みがなされている。それは食品廃棄物を減らし、環境被害を減らすだけでなく「ひよこ雌雄鑑別士」を雇うための費用およびオスの卵を孵化させるための費用を軽減することにもなる。すでに一部の欧州諸国では、オスのひよこの選別を禁止したり、廃止に向けた計画を進めている。

ひよこの性別を産卵から数日以内に識別するさまざまな実験的方法が開発あるいはテストされており、卵の殻の微小な穴からスキャナーで撮影する方法などが提唱されているが、それらの少なくともいくつかの方法は「今すぐ実用的には使えない」と報告されている。
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カリフォルニア大学デービス校(UCデービス)およびデービス拠点のスタートアップSENSit Ventures Inc.のチームが開発した新たな方法では、孵化期間の8~10日目の卵の性別を識別する。 受精鶏卵内の胚(はい)の性別を、卵殻を通して拡散される揮発性の有機化合物の匂いを「嗅ぐ」ことで識別するというものだ。

これを行うために研究チームは、大規模に卵を扱うためにすでに使用されている吸着カップを応用することで、卵から発生する空気を殻を破ることなく「嗅ぐ」方法を採用した。採取された空気はガスクロマトグラフィーや質量分析を用いて分析された。その後、論文共著者で動物科学教授の免疫遺伝学者Huajin ZhouがDNA分析によって卵の性別を確認した。Zhou教授は、家禽類における免疫遺伝学、分子遺伝学、機能ゲノミクスおよび生物情報学を主に研究している。

「卵には揮発性化合物が含まれており、その匂いを捕獲し、統計的に分析できることがわかりました」と論文の上席著者でSensit Venturesのプレジデント兼CEOであるトム・ターペンはいう。この方法を使って研究チームは、2分間のサンプル採取に基づき、孵化期間8日の胚の性別を80%の精度で識別した。

このプロセスは、吸着カップによるサンプリング技術を高速化し、多くの卵を同時に検査することでスピードアップが可能だ。
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翻訳=高橋信夫

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