バイオ

2023.06.10 11:30

ニワトリの性別を卵を嗅いで孵化前に鑑別するテクノロジー

この研究は、発生する揮発性有機物質のみを利用して、孵化期間の早期に卵の性別を識別できることを実証した。「デービス校で発明したハードウェア・プラットフォームは、孵化場に組み込むことが可能だと考えています」とターペンは付け加えた。

この技術を開発したチームを率いたのは、システム・エンジニアで、航空宇宙および機械工学教授のクリスティーナ・デービスだ。デービスは機械設計とデータ分析および化学をつなぐインターフェースで20年以上の経験を持つ。彼女は現実世界の問題を解決するために最先端の化学センサーシステムを設計、実装し、イルカの健康状態を検知する「呼気分析装置」から、柑橘類に致命的被害を与えるカンキツグリーニング病を検出する非侵襲的方法まで、複数の困難な環境での微量化学物質検出を可能にしてきた。

「デービス教授は完璧なイノベーターです」とUCデービス校Venture Catalystの技術管理・企業関係担当副学長兼執行取締役のドゥシェン・パタックが声明で語った。「彼女の発明の才能や市場洞察力と、SensIT創業チームのビジネスや起業における豊富な経験は、このUCデービスの最先端研究を社会的影響を与えるものへと転換させる理想的な組み合わせです」

将来有望なこのテクノロジーは、成長中のニワトリ胚の性別を識別することにとどまらない。このシステムは小型で廉価で効率がよい。ppb(10億分の1)レベル濃度の分子を検出する能力がありながら、9Vあるいは時計用の一般用直流電池で動作する。

「このテクノロジーには防衛と国家安全保障、食品と農業、プロセス工学と医療などの問題に応用できる貴重な機会があると考えています」とターペンが説明した。

このテクノロジーは、爆発物や植物病、喘息の環境要因の検出など、環境試料の幅広い化学物質を同定する仕組みへ発展する可能性を持っている。

SensIT Ventures Inc.は2015年に創業して、カリフォルニア州デービスを拠点にしている。この会社は、独自技術を活用してカスタム化学センサーの開発、製造、販売を行うことで、複数の産業に価値の大きいソリューションを提供している。

「私たちのように小さなスタートアップにとって、大学の人材を活用できることは不可欠です」とターペンは語った。

出典:Eva Borras, Ying Wang, Priyanka Shah, Kevin Bellido, Katherine L. Hamera, Robert A. Arlen, Mitchell M. McCartney, Kristy Portillo, Huaijun Zhou, Cristina E. Davis, and Thomas H. Turpen (2023). Active sampling of volatile chemicals for non-invasive classification of chicken eggs by sex early in incubation, PLoS ONE 18(5):e0285726 | doi:10.1371/journal.pone.0285726

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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