経済

2023.06.05 10:30

イラン、アジア諸国に二国間貿易での脱ドル化を要請

米国の100ドル札とイランの5万リアル札(Getty Images)

インド、パキスタン、イランを含む9カ国の中央銀行から成るアジア決済同盟(ACU)は、既存の主要な国際決済網である国際銀行間通信協会(SWIFT)に代わる新たな金融メッセージシステムを今後数週間で立ち上げる計画だ。

現在ACUの議長国を務めるイランの関係筋によると、先月24日に首都テヘランで開かれた会議で、1カ月以内に新制度を立ち上げることで合意に至った。

イラン中央銀行のモフセン・カリミ副総裁は国営ファルス通信に対し「SWIFTはすべての国で利用できるわけではなく、独自のコストがかかることを考慮し、(ACU)諸国は加盟国に合わせた制度を持つことにした」と説明。これは国際的な制裁により、イランの銀行がSWIFTのネットワークから除外されていることを示唆した発言だった。ロシアとベラルーシも制裁により、SWIFTの利用を禁止されている。

こうしたネットワークは、銀行間の送金などの指示を正確かつ安全にやり取りできるようにするため、国際貿易を円滑に行うための不可欠な要素となっている。

ロシアとの結び付き

今回のACUの取り組みは、イランがすでに他国と二国間で行っていることを反映したものだ。

特に昨年2月のウクライナ侵攻開始によってロシアが国際舞台で大きく孤立して以降、イランとロシアは外交・軍事・経済分野で関係を強めている。両国は新たな金融メッセージシステムの構築や、二国間貿易での米ドル使用の削減など、制裁を回避する方法を模索してきた。

ロシアのアレクサンドル・ノバク副首相が最近テヘランで行った記者会見で、ロシアとイランの二国間貿易の80%が自国通貨であるリアルとルーブルで行われていると語ったように、それは成功しているように見受けられる。両国の銀行も拡大している。ロシア第2の大手VTB銀行は先月中旬、同国の銀行として初めてテヘランに事務所を開設したことが明らかになった。その見返りとして、イラン中央銀行は、自国の2つの銀行がロシアに支店や事務所を開設する予定だと発表した。

イランは今、アジアの他の貿易相手国との間でも同様の新たな金融協定を結ぼうとしている。

イラン中央銀行のモハマド・レザ・ファージン総裁は、テヘランで開催されたACU会合で、ドルの下落は加盟国の外貨準備の保護に役立つと同時に、二国間貿易の決裁が効率的になると主張した。同総裁によると、ACUは脱ドル化に向け、新たなメンバーの加盟や決済に使用する通貨の種類の多様化も計画しているという。同組織は現在、ドル、ユーロ、円を使った取引に焦点を当てている。

ベラルーシとモーリシャスは、ACUへの加盟を申請している。先月には、ファージン総裁がロシアのエリビラ・ナビウリナ中央銀行総裁をACU首脳会議に招待していることも注目された。

イランは国際的な制裁を受けながらも、世界約150カ国と貿易を続けている。最も重要な貿易相手国は中国、イラク、トルコ、アラブ首長国連邦(UAE)だ。

イランのエフサーン・ハーンドージー経済相は最近、同国の国際貿易のうち、ドルが使用されているのは10%以下に過ぎず、2年前の30%近くから減少していると説明した。

イランのムハンマド・モフベル第1副大統領は先月、テヘランでベトナムのトー・ラム公安相と会談し、二国間貿易で両国の自国通貨を使用することを望んでいると伝え、そうした動きが二国間の経済活動を促進することにもなるとした。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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