もちろんNFTは転売されればされるほどアーティストにも還元されるものだが、自分の思い入れある作品は大切にしてもらいたいに違いない、と思いこんで居た私には新たな視点であった。同じく草野絵美氏の顧客との接点も非常にユニークである。顧客と直接会話することにより新たなクリエイティブの領域を開拓している。
エミ:私のAIフォトグラフィー『Neural Fad』を購入したコレクターの一人は20年前に日本にいたそうなのですが、私の作品が彼の若い頃を思い出させると言ってくれました。また『Neural Fad』の作品に登場している人物達のストーリーを考えるのが楽しくてしょうがないといってくださる方がいます。そのようなコメントからインスピレーションを得て、ビデオを作ったり、架空の街を作りたいと考えています。
私は、ソーシャルメディアやファストファッションのせいで忘れられてしまった日本の文化を再現したいと思っています。AIを通じて、自分の中の真実性を探求し続けたいです。
ホモ・サピエンスとしての新たな進化時期
最新テクノロジーであるAIを活用し作品を作り続ける彼女達。彼女達はテクノロジーはどのように未来を変えていくと考えているのか? クレア・シルバー氏は既にパンドラの箱が開いており、ホモ・サピエンスの進化の新たな枝分かれのタイミングであると語り、そのような時代であるからこそ草野絵美氏は人間としての倫理観、美意識が大事になると語る。クレア:数年間、重い病気に苦しんでいました。その時に、AIを使い始めましたのもありますが、AIが私のような病気を治療し、しかも、人間が古くから苦しんできた様々な問題を解決できるのではないか、と思ってました。まるで物語の主人公が困難を乗り越えていくようなヒーロー・ジャーニーをAIとともに描けないか、と。
同時に、私は病気のせいで子供を持つことができなくなるかもしれないとも思っていたので、AIが組込まれた子供という存在についても考えが頭から離れませんでした。脳インプラントを使って世界のすべての知識を子供に持たせたら、その子供は無垢のままなのか?そのような子供は、社会や階級をどのように考えるか?
ある意味、現在はホモ・サピエンスが枝分かれして新たな進化を始めるタイミングだと考えています。私はトランスヒューマニズムが怖いです。脳インプラントも恐ろしいと思ってます。ですが、おそらくそれは避けられないでしょう。なのでAIに人間らしさを与えることも大事だと思っています。
また、自分自身を見つめることも大事です。AIアーティストとして必要なのはキュレーション。何千もの画像を生成し、そこから約5つだけを選ぶという作業を行います。この作業は、自分の子供を手放すような辛い作業でもあるのですが、その行為を通して自分の中にある潜在的な芸術的な視点やストーリーを知るのに最適です。