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2023.06.02

アマゾン、プライバシー侵害で42億円支払い 訴訟2件で和解

BrandonKleinPhoto / Shutterstock.com

Amazon(アマゾン)が、プライバシー侵害に関する2つの別々の訴訟で、米連邦取引委員会(FTC)に計3080万ドル(約42億円)を支払うことで和解した。

最初の訴訟は、同社のスマートドアベル「Ring(リング)」をめぐるもので、利用者の私的なスペースを録画した映像を、本人の許可を得ずに「数千人の従業員と請負業者」に視聴させたとして訴えられた。この訴訟は580万ドル(約8億円)の支払いで和解した。

訴状によると、ある従業員は2017年6月から8月にかけて、少なくとも81人の女性ユーザーのビデオ録画数千件を閲覧。閲覧対象が「可愛い女の子」のものばかりだったことに上司が気づいたため、この従業員は解雇された。

リングはまた、ハッキング対策を怠ったとも非難された。ハッキング被害を受けたユーザーは、カメラの双方向通信機能を通じて嫌がらせや脅迫、侮辱を受けたとされる。

2つ目の訴訟は、仮想アシスタント「Alexa(アレクサ)」をめぐるもので、2500万ドル(約34億円)の支払いで和解に至った。FTCによると、アマゾンはアレクサを通じて数千人の子供の音声と位置情報を違法に保持し、「子供のプライバシーを犠牲にして」アルゴリズムを訓練するためのデータとして利用していたことで、FTC法と児童オンラインプライバシー保護法に違反した。

FTCの報道発表によると、子供のスピーチパターンは大人とは異なるため、アマゾンにとって有益であった可能性があり、アレクサのアルゴリズムを子供の声にうまく対応させるための重要なトレーニング用データとなったとみられる。

FTCの訴状によると、アマゾンはユーザーに対し、アレクサが収集した音声録音データとアレクサのアプリが収集した位置情報は削除できると保証していたが、実際にはそのデータの一部を何年も保管。一部の録音とトランスクリプトは「無期限に」保管し、Alexaアルゴリズムの改良に利用していたという。

アマゾンはアレクサをめぐる訴訟の和解条件としては他に、アクティブでないの子供のアカウントや、一部の音声記録や位置情報を削除するよう求められている。また、これらの情報をアルゴリズムの学習に使用することも禁止された。

リングの訴訟の和解条件としては、新たなデータ・セキュリティ・プログラムの実施、アマゾンとその提携業者がどアクセスできるデータの範囲についての利用者への通知が義務づけられる。両和解の発効には裁判所の承認が必要だ。

アマゾンはフォーブスの取材に対し、リングは数年前にプライバシー問題に対処したと説明。また広報担当者は、FTCの主張には同意できないとし、同社による法律違反を否定した。

forbes.com 原文

翻訳=上西雄太・編集=遠藤宗生

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