欧州

2023.06.03

移住者に補助金支給のイタリアの都市、また新たに誕生へ

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イタリアにもう1つ、補助金を支給して移住者を募る都市が登場する。しかもそれは、過去に同様の計画を打ち出したその他のコムーネ(基礎自治体)とは異なり、崩れ落ちそうな家々が並ぶ人けのない村ではない。

北イタリアの小都市、王宮や古代教会も残るマントヴァが、移住者に月額150ユーロ(約2万3000円)の補助金を支給すると発表した。

移住が収入の一部に

ロンバルディア州にあるマントヴァ県の県都マントヴァは、少なくとも1年以上居住する人を対象に、2023年9月から移住者の受け入れを開始したい考え。応募受付は、6月から開始の予定だ。

政府がマントヴァに総額40万ユーロを交付し、コムーネは9月以降と2024年1月以降の2回に分け、移住してくる人たちにそれぞれ合計20万ユーロずつを支給する。これは、100世帯までを支給対象とするのに十分な額だという。

コムーネの首長、マッティア・パラッツィは地元紙に対し、この計画の目的は「新たな住民を誘致するとともに、所有者が放置したままになっている数多くの空き家の改修を進めること」だと説明している。移住希望者には、住宅の賃貸契約を期間1年以上で結ぶことが求められる。

応募は家族でも個人でも可能。ただ、移住が推奨されるのは、専門職に就いており、毎月およそ1200~1500ユーロ(約18~22万円)の収入がある人だという。具体的な金額は、いまのところ公表されていない。

また、パラッツィによると、マントヴァでは物流分野を中心に複数の企業が投資や施設開設の計画を進めており「向こう2年において、数多くの新規雇用が生まれる見込み」また、コムーネは住民のため、福祉事業や教育・文化関連の投資に力を入れる方針だ。

歴史ある「眠り姫」

3つの人工湖に囲まれ「眠り姫」とも呼ばれるマントヴァは、貴族が暮らした宮殿をはじめとする歴史的建造物や、それらの人々によって栄えた食文化を楽しむことができる都市。だが、これまで観光地として、大きな注目を集めてきたわけではなかった。

マントヴァには、中心部を挟んで建てられた2つの宮殿がある。その1つ、ドゥカーレ宮殿は14~17世紀にかけてこの地域を支配したゴンザーガ家によって建設されたもの。公爵家の権力を誇示するものだ。

要塞のような建物のなかには500以上の部屋がある。ラファエロの手による作品が残されているほか、世界で最も美しい部屋ともいわれる「結婚の間」は、アンドレア・マンテーニャが手掛けた壮麗なフレスコ画でも知られる。ゴンザーガ家の家族の肖像画が一家の歴史を表し、豊かな植生とケルビム(智天使)たちの姿も描かれている。

もう1つは、街の中心部を挟んだ反対側にあるテ宮殿。フェデリコ2世・ゴンザーガが建てた一家の別荘、マニエリスム建築の「パラッツォ・デル・テ」は、巨大なフレスコ画が特徴だ。

そのほかマントヴァの街の中心部には、11世紀に建設されたロトンダ・ディ・サン・ロレンツォがある。この教会は、エルサレム旧市街にある聖墳墓教会を模したものとされている。

forbes.com 原文

編集=木内涼子

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