アジア

2023.06.01

イーロン・マスク訪中で見えた「米中のビジネス関係」の現在地

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在中国米国商工会議所のマイケル・ハート代表は今週、Tesla(テスラ)のイーロン・マスクCEOが北京を訪問したことは、中国が米国にとって引き続き重要な市場であることを浮き彫りにしたと述べている。

「これまでの3年間、2国間の貿易と対話を継続させるために、ビジネスコミュニティが非常に重要な役割を果たしてきたことは明らかだ」と、ハート代表は言う。

Apple(アップル)やMorgan Stanley(モルガン・スタンレー)、Microsoft (マイクロソフト)、Intel(インテル)を含む約1000人の会員を抱える在中国米国商工会議所のトップを務めるハートは、5月初旬に12人のメンバーと共にワシントンDCを訪問した。今回の米国訪問で最も頻繁に話し合われたテーマは、安全保障上の問題と、過去40年間の米中の交流が実を結んだか否かというものだった。「私は、米国の中国とのコミュニケーションが失敗だったとは思わない」と彼は語る。

2022年、在中国米国商工会議所のトップに就任した彼は、今年の中国のGDP成長率が予想を下回る中にあっても、少し前まで高級品とされていた多くの米国ブランドが、世界第2位の経済大国である中国の人々の暮らしに溶け込んでいることを指摘した。

テスラは一般消費者にとって手頃な価格とは言えないが、電気自動車(EV)市場における存在感と、上海にある大規模な製造拠点により、中国において広く認知されている。中国当局の発表によると、マスクCEOは5月30日に北京で秦剛外相と会談し、貿易やビジネスに関わる問題について話したという。

航空業界はコロナ禍により減便を余儀なくされたままだが、米中間の数十年にわたる人々の行き来は、中国人が自国の報道機関から得られない情報を彼らに提供してきた。「中国のメディアで米国について否定的なことが書かれていたとしても、米国に留学した何百万人もの中国人留学生や旅行者は、『私が知っているアメリカとは違う』と言うだろう。そして中国には、米国企業で働く人や働いたことのある人が何百万人もいる」とハートは話す。

「もちろん、2国間の貿易の不均衡は継続中で、中国は米国の基準の全てを受け入れた訳ではない。しかし、中国がいずれ、もう一つのアメリカになると考えていたような人は、そもそも考えが甘かったのだと私は思う」と彼は続けた。

ミズーリ州カンザスシティ出身のハートは、1996年に初めて台湾を訪れて以来、四半世紀以上にわたってアジアでキャリアを積んできた。彼は、ミズーリ大学コロンビア校を卒業後の2003年に中国本土に渡り、不動産サービス会社JLLの幹部を務めた後、2019年に天津で自身の会社を立ち上げ、昨年、在中国米国商工会議所に加わった。
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編集=上田裕資

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