うっ血性心不全の患者は、肺にうっ血が生じることで声に変化が現れることが知られている。コルディオが開発したアプリ「HearO」は、機械学習アルゴリズムを用いてその声の変化を検出し、患者が症状に気づく前に通知する。
米国では数百万の人々が、心臓のポンプ機能が弱まり、充分な量の血液を全身に送れなくなることで生じる、うっ血性心不全のリスクに直面している。この病気は四肢や肺に水分がたまり、放置すると入院が必要な深刻な合併症につながる可能性がある。早期に発見できれば入院を避けられるが、心不全は症状が深刻になるまで発見が難しいことで知られている。
コルディオのアプリは、うっ血性心不全の予兆を約80%の確率で検出できることが臨床試験で示された。イスラエルで実施された研究により、同社は欧州とイスラエルの当局からこのアプリの販売の承認を得たという。コルディオは、米国でより規模が大きい臨床試験を完了させ、米食品医薬品局(FDA)の承認を得ようとしている。
現在、同社の臨床試験を実施しているオハイオ州立大学の心臓専門医、ウィリアム・エイブラハムは、このアプリが市場に出回れば、うっ血性心不全の患者のための画期的ソリューションになると述べている。「コルディオのアプリは、家庭内に専用のハードウェアや機器を設置しなくて良い。必要なのはスマートフォンだけだ」と、彼は述べている。
イスラエル政府の支援によるスタートアップ
イスラエルで生まれた現在50歳のタルは、主にM&Aやベンチャー投資などの金融取引を扱う弁護士としてキャリアをスタートし、2005年にPeregrine Ventures(ペレグリン・ベンチャーズ)に入社、現在もパートナーを務めている。彼は、2007年に心臓病患者向けの医療機器を製造するNeovasc(ネオヴァスク)のCOOに就任し、そのときに医療デバイスの魅力を発見したという。タルは、2010年にネオヴァスク社がMedical Venture Corp.に買収されたのを機に同社を退社。2017年にコルディオのCEOに就任した。2013年に設立されたコルディオは、イスラエル政府がスタートアップによる研究開発を支援するIncentive Incubatorプログラムの出身企業だ。
コルディオのアプリのアイデアは、タルと共に同社を共同創業した循環器専門医のチャイム・ロタンが考案したものだという。彼のチームは、うっ血性心不全の患者の肺にうっ血が起こったときに声に変化が現れることを知っていたが、それは、症状がかなり悪化してからのことだった。そこで彼らは、声の変化をより早く発見するためのソフトを開発した。
同社のアプリ「HearO」を使用する患者は、アルゴリズムが変化を検出しやすくするために、毎朝、さまざまなフレーズを含む単語を読み上げて、アプリに録音している。コルディオの最高技術責任者(CTO)は、1993年に音声認識テクノロジー企業のNSCを設立し、2010年にAudioCodes(オーディオコーズ)に売却したイラン・シャロームが務めている。