海外

2023.05.31

ソフトバンク出資の中国AI創薬企業がイーライリリーと提携

Shutterstock

深圳に拠点を置く人工知能(AI)を活用したデジタル創薬のスタートアップXtalPi(晶泰科技)は5月30日、米国の製薬大手Eli Lilly(イーライリリー)と最大2億5000万ドル(約350億円)相当の取引で提携し、医薬品の開発を行うと発表した。

Xtalpiによると、同社が手掛ける予定の医薬品は、現状で治療薬が存在しない疾患を対象としたものだという。イーライリリーは、Xtalpiが開発した新薬の臨床試験と商業化を担当する。

「当社は、AIと量子物理学アルゴリズムのクローズドループを活用し、困難な課題に取り組んでいる」と、Xtalpiの共同創業者でCEOのマ・ジエンは声明で述べている。「イーライリリーが、医薬品のイノベーションを追求し、世界中の患者に必要とされる治療法をもたらすためのパートナーとして当社を選んだことを嬉しく思う」

2014年にマを含む3人のマサチューセッツ工科大学(MIT)出身の中国人量子物理学者らが共同創業したXtalpiは、AIや量子物理学、ロボットによる自動化を駆使し、創薬プロセスの迅速化と成功率の向上を目指している。同社は深圳に本社を置き、米国最大のバイオテクノロジー拠点であるボストンと北京、上海に研究拠点を設けている。

Xtalpiは、世界で200社以上の製薬会社に創薬サービスを提供していると述べている。同社の顧客には、Johnson & Johnson(ジョンソン・エンド・ジョンソン)の医薬品部門のJanssen Pharma(ヤンセン・ファーマ)やPfizer(ファイザー)などの大手が含まれている。Xtalpiは、ファイザーが開発し、米食品医薬品局(FDA)の承認を初めて取得した新型コロナウイウルス感染症の経口抗ウイルス薬「パクスロビド」の処方を早めるための支援を行った。

ブルームバーグによるとXtalpiは、2021年7月に約19億ドル(約2660億円)の評価額で約4億ドル(約559億円)を調達していた。同社は2020年に、ソフトバンクのビジョンファンド2や人保資本(PICC)、晨興資本(Morningside Venture Capital)らが共同で主導したラウンドで、3億1900万ドル(約440億円)を調達していた。

同社には他に、Sequoia Capital China(セコイア・チャイナ)やSusquehanna International(サスケハナ・インターナショナル)、Tencent(テンセント)、Google(グーグル)などに支援を受けている。

香港に拠点を置くAI創薬企業のInsilico Medicine(インシリコ・メディシン)も昨年のシリーズDで、シンガポールのB Capital(Bキャピタル)や、Warburg Pincus(ウォーバーグ・ピンカス)、Qiming Venture Partnersなどの投資家から6000万ドルを調達し、累計調達額が3億6000万ドル(約84億円)を超えていた。同社は、セコイア・チャイナからの支援も受けている。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事