電光掲示板には市内各地への交通アクセスが表示され、預け荷物が出てくるベルトは、荷物同士がぶつからないようにセンサーで管理され、中国のIT先進地らしい様相を見せている。
杭州は北京・上海に次ぐスタートアップ・ハブとして、また高等教育を受けた人材が多い街として知られている。5月から東京大学の研究機関の客員教授を務めることになった「アリババ」の創始者、ジャック・マー氏もこの地の出身だ。
杭州の栄華は今に始まったものではない。約800年前には宋(南宋)の首都でもあり、知や富が集積するのに加え、特産品である絹や、青磁・白磁など磁器の輸出でも栄えた。この時代は豊かな資金を背景に、庭園や喫茶、工芸を楽しむ風流な文化が花開いた時でもある。当時から日本との関わりも深く、日本からは学者や僧侶が訪れ、日本へは禅宗や茶の湯が伝わったとされる。
また、水の都でもあり、「天に極楽あり、地に蘇州杭州あり」という言葉があるほど、名勝地として知られる。古から詩人や画家を魅了してきた西湖や、北京を起点とし、今も物流に使われている人造の川、京杭大運河の終点地でもあり、いずれもユネスコの世界遺産としても知られている。
西湖で獲れる魚介類や水鳥などを材料にした杭州料理は、中国八大料理のひとつ。豊かな水を反映したスープのほか、かつて贅沢品だった砂糖をたくさん使える富裕層が多かったことから、甘めの味付けが特徴だ。
外の文化が多く流れ込む海沿いにあり、工芸も栄えたため、クリエイティブであることが評価される土地柄。南宋の時代に中国各地から多くの料理人が集まり、新しいスタイルの料理が生み出されてきた。
そんな西湖のほとりに佇むのが、フォーシーズンズホテル 杭州だ。2010年に開業した同ホテルは、宗時代の伝統建築にインスピレーションを受けたデザイン。西湖のほとりの広大な庭園には、メインダイニングのモダン中国料理「金沙(ジンシャ)」があり、上海出身の総料理長、ワン・ヨン(王勇)氏が腕をふるう。