映画

2023.06.01

「半端な実写化」はマンガ・アニメファンの大敵 興行収入で明暗分かれる

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マンガやアニメで萎えるパターンは何かというアンケートを、電子書籍コミックの情報サイト「いーぶっかー」が実施したところ、1位はなんと、というかやっぱりというか、「中途半端な実写化」でした。2位は「突然の打ち切り」、3位は「好きなキャラの声優が変わる」と続きます。2位以下は、言ってしまえば「大人の事情」によってファンががっかりしたパターンですが、実写化については莫大な予算をかけて「どうだ!」と提示したものがファンから否定されるわけで、制作者側のショックは大きいでしょう。

近ごろのテレビドラマはマンガが原作になっているものが非常に多くて「またマンガかよ」と思ったりしますが、けっこう面白くて見ちゃったりします。それが映画となると見る側の期待度が高いだけに、ガッカリ度も大きいようです。回答者のコメントは「実写化をすると、ほぼ確実につまらなくなります。原作の人気にあやかっていると感じてしまうので萎えるパターンです」とか「今が旬というだけで、まったく合っていない芸能人がキャラの演技を無理してやっているところを見ると、映画に対する残念な気持ちや漫画に対する悲しい気持ちでいっぱいになる」、さらには「納得できない事務所ゴリ押しの実写化だと、見ていて恥ずかしくなってしまう」とかなり手厳しい。

実際はどうなのでしょう。たとえば『釣りバカ日誌』、『ALWAYS三丁目の夕日』、『海猿』などは、逆にマンガが原作だったことを忘れるほど映像作品として確立され、興行成績的にも大ヒットしています。アニメの実写化では『美女と野獣』が興行収入124億円というメガヒットを記録しています。ディズニーは別格としても、『るろうに剣心』は5作の興行収入の合計が195億円を超えました。

たしかに、ハリウッド版『ドラゴンボール』のような「問題作」もありました。制作費約450億円に対して全世界での興行収入は約80億円とふるわず、原作者の鳥山明氏も残念なコメントを発表し、メディアのランキングで世界的に定評のあるWatchMojoでは「2000年代で最悪の映画TOP10」の8位にランクインするなど散々でした。また酷評された『デビルマン』は、興行収入が制作費におよびませんでした。

こうした作品は、アニメファンのトラウマになっても無理はありません。「原作の良さが破壊されるのは本当に悲しい」という意見もありました。ただ改めて振り返ると、優れた実写版も数多くあり、それほどでなくとも原作を知らない人には普通に楽しめます。そこから原作を読み始める人がいれば、むしろ嬉しいことです。小説の実写化も同様、作品に思い入れの強い人ほど実写化に抵抗をおぼえるもの。でもせっかくの作品なので、実写版は「ほう、監督はこう解釈したのか」と上から目線で楽しむのもオツじゃないでしょうか。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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