重複上場しているシャオペンの株価は急落しており、過去12カ月で60%超下落したため、同社は中国のEV株の中で最もパフォーマンスの悪い銘柄の1つとなっている。そして、あらゆる兆候がこの先さらに厄介な状況に陥ると示唆している。
シャオペンの洗練されたデザインのクルマは、中国のテクノロジーに精通した若年層をターゲットにしている。経済回復の鈍化が消費者心理に重くのしかかる中、シャオペンは積極的に値下げしているイーロン・マスクのテスラといった競合他社に対抗している。
「テスラが中国で一部モデルを約3万元(約60万円)値下げしてから競争が非常に激しくなっている」とコンサル会社Automotive Foresight(オートモーティブ・フォーサイト)のマネージングディレクター、イェール・ジャンは話す。「これは同じような市場ポジショニングの中国ブランドに本当に影響をおよぼしている」とも指摘する。
中国のEV価格競争は昨年10月にテスラが放った一撃で始まった。同社は最も売れているモデルYとモデル3の価格を下げることで、需要を喚起し市場シェアを拡大しようとした。この2つのモデルは現在、米国での価格の約3分の1ほど安い価格で販売されている。
テスラの値下げに、広州拠点のシャオペンやワン・チュアンフーのBYDといった地元メーカーも追随。シャオペンは1月に主力製品であるセダンP7の価格を12.5%下げて3万1000ドル(約430万円)とし、中国でのモデル3の基本価格に合わせた。
だが多くの購入者は消費者に強くアピールするBYDやテスラを所有したいと考えているらしく、シャオペンの戦略は販売を活性化させられなかったと話すのは86 Research(86リサーチ)のアナリスト、ワン・ハンヤンだ。昨年シャオペンを苦しめた新型コロナウイルス感染症関連の規制を中国政府がほぼ解除してなお、2023年1~3月期の納車台数は前四半期から18%減って1万8320台だった。
同社の売上高は予想を下回る5億9000万ドル(約830億円)、損失は前年同期比38%増の3億4000万ドル(約480億円)に拡大した。中国乗用車協会の推計では、中国のEV市場全体の今年の納車台数は850万台と予想されてる。前年の30%という減速は政府の補助金の段階的な廃止が原因とされている。
シャオペンはまた、サプライチェーンの問題にも直面した。86リサーチのワンによると、3月に発売されたP7のアップグレード版であるP7iの注文に対応するのに十分なバッテリーを確保できなかったという。さらに、昨年9月にハイエンドモデルとして発表されたSUVのG9の販売にマーケティングのミスが響いている。最高価格6万6000ドル(約920万円)のG9は、その複雑な価格体系のために多くの購入希望者が選択肢に戸惑い、敬遠されてきた。