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2023.06.02 07:30

アジアの農業を「AIとデータ」で変える 世界の野心的な技術

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データ駆動型農業

世界的に、データ駆動型農業は、食料安全保障の課題に対処するための最も有望なアプローチの1つとして、その勢いを増しています。国際食糧政策研究所によると、データ駆動型農業の技術は、2050年までに農業の生産性を67%も向上させ、同時に農業と食糧のロスを削減することができるとされています。
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しかし、低・中所得国にとっては、新技術を採用するための高いコストが障壁となることも。特に、零細農家が主要なグループであり、4億5千万人がこの地域で消費される食料の80%以上を生産しているアジアでは、これは大きな懸念事項です。

データ駆動型農業は、農場に関する情報を収集することから始まりますが、デジタルインフラが整っていない農村部にとっては、ハードルが高いままです。このデータは、センサー、ドローン、トラクター、気象観測所、衛星画像など、さまざまなソースから取得されるため、手頃な価格のインターネット接続が必要となるのです。

これらのデータストリームは、長期的に使用することで有用なプラクティスを示し、これまでの作物サイクルに基づく提案ができるようなります。それにより、投入量を削減しながら、生産量はより高く、そして、環境への影響を少なくすることができるようになります。
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最大限の効果を得るために必要なのは、適切なデータを適切な目的、適切なタイミングで活用すること。しかし、農業・食品システムは、巨大かつ複雑で、断片的な性質を持つため、東南アジアだけで1000億ドル以上と見られているビッグデータの潜在的な経済価値を引き出すことは、大きな挑戦です。より包括的な成長を確保するためには、零細農家が現代の農業食品バリューチェーンに参加できるようにする必要があるでしょう。

AIで農業データを実用的なインサイトに

土中のセンサーから地球を周回する衛星に至るまで、取得される農業に関する多くのデータが農場全体で生成されていますが、多くの農家や組織は、これらの大量のデータを効果的に活用するための適切なリソースを持ち合わせていないのが実情です。また、農業食品のバリューチェーンは、ステークホルダーや活動が複雑に絡み合っているため、データセットを管理するための相互運用可能なシステムがないまま、サイロ化したままになっています。

しかし、AIはデータのサイロ化を解消し、膨大な量の複雑な農業データを実用的なインサイトに変換することができます。マイクロソフト・リサーチでの長年の研究と、ファームビーツ・プロジェクトで確立したソートリーダーシップに基づき、私たちは「FarmVibes.AI」という、農業のあらゆる段階での意思決定を導くことを目的としたツール群をリリースしました。
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文=Ahmed Mazhari, President, Microsoft Asia

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