政治

2023.05.30 12:00

英製巡航ミサイル配備のウクライナ空軍部隊、反攻に向け準備着々

Getty Images

ウクライナ空軍が忙しくなっている。ロシアが侵攻する前に、同軍が保有していた戦闘機と爆撃機はわずか125機ほどだ。これらを使って2022年春のロシアによる無謀なキーウ攻撃の初期に首都上空を守った。その攻撃が失敗した後は東部と南部の前線に注力した。

15カ月にわたる厳しい戦闘で、ウクライナ空軍は戦前に保有していた機体の少なくとも半分、そして多くのパイロットを失った。だが苦戦する中で、ある小さな部隊は比較的稼働が少なかった。偵察任務を担当する第7戦術航空旅団だ。戦場の上空はパイロットが偵察を行うにはあまりにも危険な状態になっていた。

ウクライナ空軍は英国と緊密に連携し、偵察を行うこの部隊の少なくとも一部に英国製の巡航ミサイル、ストームシャドーを配備した。同部隊はウクライナ西部にある基地を拠点に2人乗りの超音速偵察機Su-24MRを運用している。

そして今、偵察を任務とするパイロットらは重量が1.5トンある亜音速のストームシャドーを最大約250キロ先の攻撃目標に向けて発射させている。特に、ロシアの物流業者が部隊に食料や燃料、武器を供給するのに使っている倉庫を標的にしている。

これらの攻撃は、軍事計画を練る者が「シェーピング作戦」と呼ぶものの一部だ。つまり、敵の兵站を混乱させ、前線にいる部隊を飢えさせることで、攻撃を成功させるための条件を整えようとしている。

以前より予想されているウクライナ軍の反攻はまだ始まっていない。欧米製の戦車や戦闘車両が配備された旅団は位置についている。地面がぬかるむ春は終わった。ウクライナ軍は何かを待っている。おそらく、Su-24の乗員が新たに入手した高性能ミサイルでロシアの補給線を断つ作戦を終えるのを待っているのだ。

ロシア軍が2022年2月24日早朝にウクライナに侵攻したとき、ウクライナ空軍は少なくとも21機、最大25機のSu-24MとSu-24MRを保有していた。

最大16機の爆撃機と偵察機9機はすべてスタロコスティアニティヴ空軍基地の第7戦術航空旅団に所属していた。

同連隊は1年3カ月で少なくとも17機のSu-24を失った。大半がロシア軍の防空ミサイルで撃ち落とされた。昨年10月にはウクライナ中央部のポルタヴァ州上空でロシア軍がSu-24MR1機を撃墜し、乗員2人が犠牲になった。失った他の16機に偵察機が何機含まれているのかは不明だ。もしかしたら含まれていないかもしれない。

第7戦術航空旅団にとって幸いなことに、ウクライナ全土に最大47機の古いSu-24が保管されていた。その多くはキーウ近郊のビラツェルクバの放置場にあった。技術者たちは第7戦術航空旅団が戦い続けられるようにするためにこれらの古い機体を修理してきた。

英政府が2月にウクライナ政府に空中発射型の巡航ミサイルを初めて供与すると決定したとき、第7爆撃連隊のSu-24、具体的にはSu-24MRは明らかにこのミサイルを搭載する候補だった。

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翻訳=溝口慈子

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