そして最後の可能性は、アップルが競合他社に勝るものを何も持っていないというものだ。どんなに優れた技術やスタイル、エルゴノミクスを備えていようとも、アップルのソリューションが競合を上回らない場合だ。もしそうだとしたら、かつてアップルのCMに出演したケビン・コスナーに再び登場してもらい、集まった開発者にソフトウエアツールや「アップルだけが提供できる無限の可能性」を売り込んでもらうことが必要かもしれない。
果たして同社のアプローチは、「アップルがヘッドセットさえ作れば、向こうからやって来るだろう」というものなのだろうか?
もちろん、真の勝利は、すべてのアップル製ヘッドセットが同社のアカウントに結び付けられ、ヘッドセット用のあらゆるソフトウエアがアップルストアを通じて提供されることだ。そうすることで、同社は静かに「ウォールド・ガーデン」(特定のプラットフォームの中にユーザーを囲い込む仕組み)を構築できる。アーリーアダプターたちが、そうしたアップル本社のソリューションを何度も繰り返して利用し、その小さな利点を一つ一つアピールしていくことは間違いない。
その結果アップルは、インフルエンサーやアーリーアダプターが技術を賛美し、その非常に高価な買い物を正当化するという好循環を手に入れることができる。そうなればティム・クックと彼のチームは、実用性に乏しいこのヘッドセットが世間にどう受け止められるのかを見極めるための2年間の猶予期間を得られる。
(forbes.com 原文)