イーロン・マスクの「脳埋め込みチップ」、初の臨床試験へ 米FDAが承認

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イーロン・マスクの医療機器会社Neuralink(ニューラリンク)は25日、初の臨床試験を開始する承認を米食品医薬品局(FDA)から取得したと発表した。人間の脳とコンピュータを直接つなぐインターフェースの開発を目指す同社にとって重要なステップとなる。

ニューラリンクの脳コンピュータ・インターフェイスは、脳に埋め込まれた数千個の小さな電極を使って、ニューロンから発せられる信号を読み取り、コンピュータに送信する。FDAは昨年、安全性に関する懸念から、ニューラリンクによる臨床試験の承認申請を却下したと報じられていた。

ニューラリンクはTwitter(ツイッター)での発表で、承認は同社が「FDAと緊密に連携」した結果だと説明。臨床試験への参加受け付けはまだ開始しておらず、詳細は近日中に発表すると述べている。同社の共同創業者であるマスクは、この発表を受けたツイートで、ニューラリンクのチームに祝辞を送っている。

マスクは昨年12月に開催されたニューラリンクのイベントで、人間では初めてとなる脳へのチップ埋め込みを6カ月以内に実施できる見通しだと述べていた。同社はこのイベントで、サルとブタに対する脳チップ使用例のデモンストレーションを実施。マスクは、チップの当面の実用化例として、失明者の視力回復や、麻痺患者の運動機能の回復を挙げた。だがマスクは最終的に、人間の知能が人工知能(AI)と直接接続し、最終的には融合することを可能にする脳チップを作ることを目標としている。

ロイター通信は3月、ニューラリンクが2022年に臨床試験の承認を申請したものの、FDAにより却下されたと報じた。FDAは、脳インプラントの安全性、特にリチウム電池や、脳の他の部位に移動する可能性のあるワイヤー、脳を損傷することなく安全にデバイスを取り外す能力に関する懸念を示したとされる。

同社は、動物福祉法違反の疑いで米農務省の調査を受けていることも報じられているが、今回の承認がこの調査にどのような影響を与えるかは不明だ。同社は2018年以降、約300頭の羊、豚、猿を含む約1500頭の動物を死なせたとされる。

告発を行った従業員たちは、成果を急ぐマスクの方針により、必要以上の数の動物が犠牲となっていると主張。一方でニューラリンクは、動物虐待疑惑を全面的に否定し、同社は動物福祉に取り組んでいると主張。同社の施設と動物ケアプログラムは農務省から「一度も警告を受けたことがない」と述べている。

forbes.com 原文

翻訳=上西雄太・編集=遠藤宗生

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