「とても頭の良い祖父で、すべてを知っているかのように感じていました」
祖父は小川が18歳のときに亡くなった。初めての身内の死で、それも特に身近に感じていた人物を失ったことで、「人生の時間は有限である」ということを深く実感した。
同時期に、亡くなった祖父の父、つまり曽祖父にあたる人物が実業家だったことを知り「小川家の事業を復活させたい」という思いが湧き上がった。このことが小川を起業家への道を進ませたのだという。
家族には大学は辞めないこと、3年生までにうまくいかなければ就職するという約束をし、チャレンジは始まった。
>>前回 #1タイミー創業者の小川嶺が、小学校の「転校」で学んだこと
大学2年生で初の起業
「世界で初めてかそれに近いことで、自分の原体験に基づいている事業でないと、人生を賭けて追求するモチベーションが湧かない」起業するにあたっては、そんなこだわりを持っていた。
18歳のときから、世の中をアッと言わせるようなアイデアを生み出したいと考えていた小川。起業にはいたらなかったものの、原点となったモノづくりは自身の寝坊を防止するための目覚まし時計だった。
「音だけでは二度寝してしまう」という問題を解消するため、五感を刺激するにおいが出る時計を思いついたのだ。試作品までつくったが、すでに海外で近い事例があることがわかった。海外ではそのアイデアにGoogleが目をつけたらしいと知り、「追いつけない」と熱が冷めてしまった。
初の起業となったのが、アパレル関連事業のRecolle。2017年8月、立教大学2年生のときだった。当初のサービスは、自分の体形と自分の好みを打ち込むと、人気ファッションブランドから似合う服の提案がもらえる、バーチャル接客ツール。男子校出身で中学高校時代はサッカー漬けの生活を送っていた小川はファッションに疎く、「おしゃれになりたい」という思いから立ち上げた。
ただ、しだいに投資家たちから「女性のほうがマーケットが広い」などとアドバイスを受け、事業内容が変化。試着をするだけで割引になる、女性向けのサービスに着地した。そして起業から1年半のタイミングで、500万円の資金調達が決まろうとしていた。