自動車をはじめとする製造業が集積する県が、イスラエルやシンガポール、中国や米国テキサス州と相次いで連携を鮮明にするのはなぜか。そして、新アリーナやスタートアップインキュベーション施設、エンターテインメントパークという大プロジェクトの連関が目指すものは?
アニマルスピリットで世界に打って出るスタートアップを後押しし、県政をアップデートしていくために──。産業集積県で人的資本を豊かに育む知事がインパクト県政を語り出す。
知事からの手紙
日本のセンターから、メガリージョンを創ろうじゃないか
「東京は世界都市であり、日本の首都であり、アジアの首都です。東京は世界中から人々や資金、情報が集まってくる場所だ。ニューヨークやパリと並び、東京は世界都市として自明です。これは言うまでもありませんね」ベンチマークしている自治体はどこか? この問いに、大村秀章は即答した。国会議員として15年、知事として12年務めた大村は、「東京が栄えなければ日本も栄えない」と言い切る。しかし、続けて出た言葉には力がこもる。東京何するものぞ、愛知が日本のど真ん中である、と──。
「アメリカはどうですか? 世界都市の一角であるニューヨークに負けるかという勢いでメガリージョンの大都市圏が国内にひしめいている。ロサンゼルス、サンフランシスコ、シカゴもしかり。テキサス州を見れば北部にダラスがあり、南部にはヒューストン。フロリダ州にはマイアミ。枚挙に暇がありません。しかし、それだけのインパクトを持つメガリージョンが日本にあるか?
結局は「東京一極集中」という言葉で表されてしまうんですよ。私は東京を訪れるたびに、いまだやまない改造でさらなる発展を遂げている都市の変貌を目の当たりにします。ダイナミックな更新には目を見張りますが……やはり、対抗する軸を作らないかん。いつも、そんな思いを新たにするのです」
大村は、日本のメガリージョンが持つポテンシャルに言及した。2027年にリニア中央新幹線が開通することで、首都圏・中部圏・関西圏が一つにつながり、巨大な経済圏が生まれる。そこでセンターを占めるのが、東京と40分で、大阪と20分でアクセスできる名古屋(愛知県)だ、と言うのだ。
「東京、名古屋、大阪をつないで誕生するのは、圏内の人口が約8000万人以上になるメガリージョン。そこで真ん中にあるのが愛知県です。私たちは世界に冠たる製造業のインフラとグローバルに集客できるスポット、そしてスタートアップ人材を結ぶフィールドを一本に結ぼうとしているのです」