AI革命と学校の進化

ただ、こう述べると、専門学校や短大、美大や芸大の方々が未来に希望を持たれるかもしれないが、もし、これらの学校が、真に社会で活躍する人材の育成を願うならば、実は、様々な専門スキルやアートスキルを教えるだけでは、不十分である。なぜなら、実社会で活躍するためには、それぞれの専門分野の「エキスパート・スキル」に加え、分野を超えて求められる「プロフェッショナル力」が不可欠だからであり、従来の専門学校や短大、美大や芸大では、このプロフェッショナル力を身につける教育を重視してこなかったからである。

この「プロフェッショナル力」を、筆者は、具体的に、1チームのメンバーの智恵を集めて新たなアイデアを生み出せる「創造的コミュニケーション力」、2異なった分野のエキスパートと協働できる「異業種コラボレーション力」、3いかなる状況変化にも柔軟に対応して仕事を進められる「創発的プロジェクト力」、4革新的な商品やサービス、ビジネスを生み出すことのできる「戦略的イノベーション力」、5海外の人材とも協働できる「異文化グローバリスト力」という「5つの力」と呼んでいる。

されば、これからのAI革命の嵐の中で、大学も専門学校も超えた「新たな教育機関」、エキスパート・スキルとプロフェッショナル力の双方を学ぶ、「新たな学びの場」が、必ず生まれてくるだろう。しかし、その新たな場が最も力を入れるべきは、やはり、「人間力」。それこそが、AIが決して代替できない、人間の「究極の力」だからである。


田坂広志◎東京大学卒業。工学博士。米国バテル記念研究所研究員、日本総合研究所取締役を経て、現在、多摩大学大学院名誉教授。学校法人「21世紀アカデメイア」学長。世界経済フォーラム(ダボス会議)専門家会議元メンバー。全国7700名の経営者やリーダーが集う田坂塾塾長。著書は『人類の未来を語る』など100冊余。

この記事は 「Forbes JAPAN 2023年7月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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