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2023.05.29 14:00

投資家から「共感」され続けるために、IR担当者がすべき発信とは

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四半期決算で発信すべきこと

株式市場の参加者の中では、証券アナリストが「中立な観察者」です。企業内では、市場との接点であるIR担当者が社内の「中立な観察者」であるべきでしょう。この2者が、四半期決算で投資家に伝えれば良いことはなんでしょうか?
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まず、IRの役割は、自社の良いことだけを発信することではありません。表面的なアピールで共感を得ても、共感に値しないことが市場に露呈したときの非難の大きさや株価への影響は、言うまでもありません。

では、証券アナリストは、具体的に企業の何を見て、株式市場の参加者に対して何を伝えるべきでしょうか。

以前の記事で、投資家に向けた、企業価値拡大へのストーリーに盛り込むべき重要な要素として、「ナラティブ」「ロジック」「トラックレコード」の三つを挙げました。このうち、「ナラティブ」と「ロジック」は短期的には大きな変化がない傾向があります。したがって、定期的な「トラックレコード」の更新が必須です。四半期ごとの業績発表やM&Aなど、重要なイベントのタイムリーな情報開示がこれにあたります。
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中長期のナラティブに共感したファンドマネージャーは、短期的な変化、特にロジックで重要な役割を果たすKPIの変化量や変化のスピードにも注目しています。過去のトラックレコードをもとにしてロジックを構築し、ナラティブに基づく将来の成長性と収益性を予測し、企業価値を計算しています。つまり証券アナリストには、現在のKPIや財務指標のわずかな変化を適切に企業価値の計算に反映させることで、「中立な観察者」としての役割を果たすことが求められます。

企業は何を発信し続けるべきか

企業からよく聞かれる苦情の一つに、四半期決算で、市場の関心が短期的な業績変化ばかりにあり、中長期の戦略についての質問がほとんどないというものがあります。たしかに、短期にしか関心のない投資家もいます。その一方で、中長期のシナリオを理解したうえで、企業価値に影響を与える可能性のある短期的な変化に関して質問を行うファンドマネージャーも多いのです。

IR担当は社内の「中立的な観察者」ですから、短期業績に関する質問の背後にある中長期の投資家の考えを理解し、必要なら経営者にフィードバックすることも重要な役割です。

株主は債権者とは異なり、出資したお金が戻ってくる保証も、配当を受ける保証もありません。株式を売却する選択肢もありますが、売却時に株価が上がる保証もありません。長く保有し続けたい株主にとって、共感した企業の未来に対しては、期待し、観察するしか方法はありません。

そのため、企業は自らが共感に値する存在であることを定期的な発信で示し続ける必要があります。これがIRの原点であり、共感経済の本質と言えるのです。

参考:『道徳感情論』アダム・スミス著 村井章子+北川知子訳 日経BP社

連載:ナラティブIR
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文=市川祐子 編集=露原直人

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