「みんな、そんなに先のことまで考えてないよ。きょうの戦いに集中するだけさ」とエンゼルスの外野手テイラー・ウォード(29)は語る。
とはいえ、エンゼルスにとっては、先のことも少々気になるというのが本音だろう。というのも、今シーズンを終えるころに重大な決定が控えていて、それが球団に大きな影響を与えるに違いないことは、ペリー・ミナシアン・ゼネラルマネージャー(GM)からフィル・ネビン監督、選手、バットボーイまで、誰しも知るところだからだ。
大谷翔平(28)その人のことである。投打の二刀流で活躍する大谷は、今シーズン後、フリーエージェント(FA)の資格を得る。エンゼルスにとって、あるいは獲得をめざすどの球団にとっても、大谷の価値はどれほど高く評価しても足りないほどだ。
大谷はシーズンオフに野球史上で最高額の契約を結ぶことがほぼ確実視されている。最低でも5億ドル(約700億円)は提示されるだろうし、もしかすると6億ドル(約840億円)を超えるかもしれない。
「彼は唯一無二の存在。彼みたいな人はほかにいないし、近い人だっていないよ」とウォードはいう。
野球の歴史を通じて、大谷のように投手と打手の両方で傑出した選手は、ベーブ・ルースを含めてほかに誰もいない。MLBで通算100本塁打・500奪三振を達成したのは大谷が初めてだ(編集部注:MLBのデータベースではルースの奪三振数は488となっているが「501」とするデータもある。その場合、通算100本塁打・500奪三振は2人目となる)
大谷の米国時間5月24日現在の成績は、打手としては打率0.280(2割8分1厘)、出塁率(OBP)0.354、出塁率と長打率を足したOPSが0.888。ホームランを12本放ち、盗塁も6個決めている。投手としては5勝1敗、防御率3.05で、三振を80個奪い、安打は28本に抑えている。
大谷は日本から米国に渡った最初のシーズンである2018年にアメリカン・リーグの新人王を受賞。2021年にはア・リーグ年間最優秀選手(MVP)に選ばれ、2022年もMVPの投票でニューヨーク・ヤンキースのアーロン・ジャッジに次ぐ2位だったほか、サイ・ヤング賞の投票でも4位に入った。
ただ、チームの方は大谷の加入後も優勝を果たせていない。通常は大谷の次に打つバッターとして、3度のMVPに輝くマイク・トラウトも擁するのに、リーグ制覇を達成できていない。エンゼルスは2014年を最後に優勝から遠ざかっている。同年のポストシーズンでは1勝もできず、勝ったのは2009年が最後だ。
大谷はFAについては語りたがらず、この記事のためのインタビューも丁重に断られた。