この研究は、ノッティンガム大学の味覚科学センターで行われた。民族性(白人とアジア人)と、味覚と呼ばれる感覚のさまざまな現象との関連性を調べた最初の研究となる。
本センターは、PROP taster statusやThermal Taster Status、Sweet Liking Statusを含む味覚感受性が、味の知覚に与える影響について調べる広範な研究を行ってきた。
Super tasterとは、「6-n-プロピルチオウラシル」(通称PROP)という化合物から苦味を知覚する能力を持つ人をさし、遺伝子プロファイルと関連する。Thermal Tasterとは、実際には味覚刺激がないのに、舌を温めたり冷やしたりすることで味覚を感じられる人のことだ。Sweet Likerとは、非常に甘味の強い食品を好む人をさす。
Food Quality and Preference誌に掲載された結果によると、アジア系民族の人々は『super tasters』である可能性が高く、さらに『thermal tasters』や『low sweet likers』である可能性も高い。興味深いことに、男性はより甘いものを好む『high sweet likers』である可能性が高いことも判明している。
この研究を主導する、ノッティンガム大学食品科学講師のQian Yang氏は次のように述べる。「アジア人と白人の集団を比較した研究は不足しています。本研究は、民族性と味覚表現型の関連性、そしてそれが味覚の強さの知覚にどのように影響するかを調査した初めての研究であり、今回の発見は重要度が高い。
味覚やその他の口腔感覚の知覚強度は、個人間で大きく異なることが示されている。それらは、栄養状態や健康状態に影響を与える、食の嗜好や消費の最も重要な決定要因の1つである可能性がある。本研究で得られた知見は、人々の味覚に直接訴えかける新商品開発に役立つと思われます」。
味蕾をくすぐる
人間の舌は、味蕾(乳頭)に包まれている。舌の前方先端にあるキノコ状の小さなコブは茸状乳頭で、味覚受容体があり、食べ物の分子と結合することで脳が何を食べているかを識別することができる。味覚は、食物から放出された特定の化合物が唾液に溶け、味蕾内の味覚受容細胞と相互作用することで認識される。ほとんどの哺乳類は、甘味、苦味、酸味、塩味、うま味の5種類の味を感じることができるが、その他にも脂肪酸、金属、コク味、カルシウムなどの感覚も味覚として認識されることが判明している。
本研究では、223人のボランティアの味覚の表現型、民族性、性別を把握し、これらの要素が味覚体験にどのように関与しているかが調べられた。味覚の強さは、味覚ソリューションの強さを参加者に尋ねることで測定した。
アジア人は白人に比べ、酸味や金属味に敏感であることが判明した。これは、消費者が食品や飲料の味の濃さをどのように感じるかが、民族によって異なる可能性があることを示しており、大変興味深い発見だ。
Qian Yang氏は、「市場に出す新製品を見つけるには、多大な洞察力と投資が必要だ。現在のグローバルな食品市場の競争において、民族によって味の感じ方に違いがあることを理解することは、食品メーカーが新製品を開発したり、異なる消費者のニーズを満たすために製品設計を調整したりする上で、より効果的な手助けとなるだろう」と語る。