経済

2023.05.26 12:30

英アストンマーティンの3位株主に浮上した中国「吉利」の野望

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中国の自動車業界のビリオネアである李書福(リー・シューフー)は、Volvo(ボルボ)やPolestar(ポールスター)、Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)、Lotus(ロータス)、吉利汽車(ジーリー)の経営権や株式の大きな割合を保有し、世界中に事業を拡大している。

李が創業した浙江吉利控股集団(ジーリーホールディンググループ)は5月18日、英国の高級車ブランドAston Martin Lagonda(アストンマーティン・ラゴンダ)への追加出資を発表した。ジーリーホールディンググループは昨年同社の株式を取得しており、今回の追加出資により、保有比率はこれまでの約2倍の17%に上昇した。

このニュースを受け、ロンドン証券取引所ではアストンマーティンの株価が21%上昇した。英フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、ジーリーホールディンググループは2億3400万ポンド(約403億円)を追加出資し、アストンマーティンのローレンス・ストロール会長が率いる投資家コンソーシアムや、サウジアラビアの政府系ファンドPublic Investment Fund(パブリック・インベストメント・ファンド)に次ぐ第3位の株主になったという。

ストロール会長は、声明の中で次のように述べた。「ジーリーホールディンググループは、戦略的に重要な成長市場である中国に対する深い知見と、同国の技術にアクセスする機会を我々に提供してくれる。この取引によって同社と長期的なパートナーシップを構築し、全ての株主に大きな価値をもたらすことができると信じている」

中国は、世界最大の自動車市場であり、EV生産台数で世界1位を誇る。同国の自動車メーカーはグローバル展開を加速しており、今回のジーリーホールディンググループによるアストンマーティンへの追加出資はその一環だ。フォードは今年、中国のバッテリーサプライヤーであるCATL(寧徳時代新能源科技)とミシガン州でバッテリーを共同生産すると発表した。CATLは、昨年12月にドイツの工場で生産を開始している。

また、中国のトップEVメーカーであるBYDは、東南アジアに工場を建設しているほか、カリフォルニア州で工場を運営している。

「アストンマーティンの持ち株比率を高めるという当社の判断は、彼らの成長性や技術力、経営陣に対する我々の自信を反映している。今後は、技術面のシナジーや新たな成長機会を模索し、このアイコニックなブランドの潜在能力を最大限発揮させることを楽しみにしている」と李は声明の中で述べている。

ジーリーの株価は過去1年で30%下落

FTによると、ジーリーホールディンググループはアストンマーティンと同社の取締役会に社外取締役を派遣することで合意したという。Forbes(フォーブス)のリアルタイム・ビリオネアリストによると、李の推定資産額は151億ドル(約2兆922億円)、ストロールの推定資産額は37億ドル(約5126億円)となっている。

グローバルで大きな影響力を持つジーリーホールディンググループだが、競争の激しいEV業界での消費者の関心の変化や世界経済の不確実性増大などを受け、この1年での出資先企業の株価パフォーマンスはまちまちだった。ボルボは時価総額の半分を失い、ジーリーの株価は約30%下落した。

李は中国の農村で育ち、1986年にジーリーホールディンググループを設立した。同社は現在、全世界で12万人以上を雇用している。現在59歳の李は、2014年に行われたインタビューで、少年時代に砂で最初の車を作ったと述べていた。

「私の家は玩具を買う余裕がなかった。将来、本物の車を作るようになるとは想像もできなかった」と彼は語っている。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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