2023.09.17

戦中戦後の消火活動に奔走した「ニッサン180型消防ポンプ自動車」の再生を完了

nissan

(以下記事は6月に公開された「Octane」からの転載である)


東京消防庁と日産自動車株式会社は、本格的な国産消防ポンプ自動車の第1号と言われ、東京消防庁が長年保管してきた「ニッサン180型消防ポンプ自動車」を走行可能な状態にする再生を行なった。本車両は、6月15日(木)から18日(日)に開催の「東京国際消防防災展 2023」にて展示が行われ、イベント初日には最後の仕上げ作業となる「ホーン取り付け」と合わせて、お披露目される。

かつて日産が製作した「ニッサン180型消防ポンプ自動車」は、1941(昭和16)年に大田区の蒲田消防署に配置され、戦時中は空襲火災の消火活動で大きな力を発揮した。その後、1945(昭和20)年5月に高輪消防署(二本榎出張所の前身)に配置され、東京オリンピックが開催された1964(昭和39)年10月まで使用された後、高輪消防署二本榎出張所で、広報車両の1台として展示されてきた。

今回の再生は、日産の社内活動で、歴代の日産車の再生に取り組む「日産名車再生クラブ」に所属する4名のエンジニアが担当した。当初の再生目標としていた、走る、曲がる、止まるというクルマの基本性能のみならず、動かなくなっていた方向指示器やワイパー、点灯しなくなっていた赤色灯など車両全体の電気系統の再生も行われた。

今回、再生を完了した「ニッサン180型消防ポンプ自動車」は、「東京国際消防防災展 2023」での展示後、東京消防庁の広報車両として保管され、今後、同庁が実施する様々なイベント等で活用される予定だ。

<ニッサン180型消防ポンプ自動車 再生の取り組み>

日産の歴代の名車再生(レストア)を行う「日産名車再生クラブ」では、「往年の車をきちんと動く形で保存したい、そして、当時の最高レベルの技術を学びたい」という想いを持つ所属メンバーが、様々なレストアに取り組んでいる。

今回の再生は、「走行ができなくなっている『ニッサン180型消防ポンプ自動車』を再び走らせることができないか」という東京消防庁企画調整部広報課からの相談を受けて検討を開始したそうだ。再生に携わった「日産名車再生クラブ」の有志4名は、当時の塗装や凹みなどは活かしつつ、走行を実現するために約2年にわたって数々の作業を行い、本モデルの再生を完了した。

■東京消防庁 企画調整部広報課 消防司令 松村 龍也氏 コメント
2023年は1923(大正12)年9月に発生した関東大震災から100年目を迎える節目の年です。この年に歴史ある車両が再び走り出せるようになったことを大変うれしく思います。多くのみなさまに愛される車両として様々なところで活用し、都民の防災意識の向上に貢献することを願っています。

■再生の取り組みリーダー 日産自動車 エンジニア 河合 俊明氏 コメント
社内においても戦前の日産車に触れる機会が少ない中で、戦火の中で活躍し、戦後も地域の安全を守ってきた歴史的な車両の再生を行う今回の取り組みは大変貴重な体験でした。この車に再び息吹を与えるべく、社内に残っていた整備要領書を参考にしつつ、現場で現車と向き合いながら、当時の活躍に想いを馳せつつ、メンバーとも楽しみながら再生作業に取り組みました。


(本記事は「Octane」の転載記事である。)

ForbesBrandVoice

人気記事