フォードが「AMラジオ廃止」を撤回、緊急時の懸念で

Shutterstock

米Ford(フォード)のジム・ファーリーCEOは5月23日、同社の車両でAMラジオを廃止するという決定を撤回し、2024年のフォードとリンカーンの全車両にAMラジオを搭載すると発表した。この動きは、議員らが緊急時におけるAMの重要性を指摘し、著名な保守派がAMは政治的なトーク番組に不可欠だと警告したことを受けてのものだ。

ファーリーCEOは、2024年のフォードとリンカーンの全車両にAMラジオを搭載することに加え、現在はAMの受信機能を持たないフォードの電気自動車(EV)のオーナーに、ソフトウェア・アップデートを提供すると述べている。

フォードは4月に、マスタングMach-EやF-150ライトニングを含む、2024年以降のガソリン車とEV車両に、AMラジオを搭載しない予定だと述べていた。

BMWやTesla(テスラ)、Audi(アウディ)、Porsche(ポルシェ)などの自動車メーカーは、すでにAMラジオを搭載しないEVの販売を開始している。電気モーターはAMの電波に干渉する懸念があるため、EVはガソリン車よりも先にAM非対応になる場合が多い。

昨年秋のニールセンの調査データによると、米国で毎月AMラジオを聴いている人の数は8230万人とされている。

一部のメーカーは、EVからAMラジオを取り除く理由として、電磁干渉による音質の悪さを挙げている。また、かつては主流だったAMラジオからFMやストリーミングなどの選択肢にリスナーが移っていく中で、デジタルのストリーミングが有力な代替手段になると主張している。

しかし、大手の自動車メーカーは、公共の安全に関する懸念や緊急情報を伝達するAMの重要性を理由に、EVにAMラジオを残すよう議員から要請されている。民主党のエド・マーキー上院議員は先日、自動車メーカーが、新車にAMラジオの受信機能を搭載することを義務付ける法案「AM for Every Vehicle Act」を提出した。この法案はまた、ストリーミングのような代替システムが、公共の緊急警報を受信するAMラジオの役割を担えるかどうかを、政府の説明責任局(GAO)に調査させることを求めている。

一方、保守派の中には、主にAMで放送されている保守派のトーク番組に影響を与える可能性があるとして、AMラジオの廃止に反対する声もある。右派の評論家で全国放送のAMラジオ番組を持つマーク・レヴィンとショーン・ハニティは、自動車メーカーに方針を転換するよう求めている。

「AM for Every Vehicle Act」の導入を支持する民主党の下院議員、ジョシュ・ゴットハイマーは、先日の声明で、「携帯電話やインターネットが使用できず、停電でテレビが視聴できない場合でも、AMラジオは受信できる」と述べている。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事